そう送った時には時刻は十二時を過ぎていた。
懐かしい日々の記憶に胸は温かくなり、忘れようとしていた彼女への気持ちは蘇ってくる。
伝える勇気もなくて、諦めかけていたこの気持ちが。
「あ、やべ…」
あなたとのやり取りに夢中になっていた俺は、土曜日も部活があることをすっかり忘れていた。
“バスケやってる人ってちょっとカッコよく見えるよね”
そんな幼馴染の何気ない一言で 俺が中学時代からずっとバスケを続けているなんて、きっと彼女は知らないのだろう。
あなたを好きになった理由など 今はよく分からない。
気づけば俺の心を彼女が占めていて、恋をしている自分がいた。
幼かった頃には無かった感情に最初は少し戸惑うこともあったが、恋をしている時間は幸せなものだった。
彼女が高校に上がり 俺も部活動と勉強に追われる日々が続いてからは、連絡を取ることも少なくなった。
時々あなたの姿は見かけることもあったが、隣を歩く男の姿に 声を掛けることは出来なかった。
中学卒業後。
頭のあまり良くなかった俺が彼女と同じ高校に通えるはずもなく、俺は自分の学力相応の学校へ通い始めた。
身長もかなり伸び、身なりに気を使い始めたからか、女の子に告白されることも少なくなかったのだが、やはり俺の心はあなたのもののままだった。
諦められなかったこの想い。
伝えたい気持ちはあるのに、俺はどうしてもこの関係を壊せないんだ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。