晴樹からのメッセージがきていることに気がついたのは昼休憩の時だった。
ロック画面に映る“あなたって彼氏とかいるの?”の文字に 握っていた箸を落としてしまいそうになる。
「どうしたの?」
目の前でパンを頬張っている理沙は 不思議そうにこちらを見つめてくる。
「…ううん。何でもない」
ここ数日はずっと彼と連絡を取り合っていた。
まるで会えないでいた時間を埋めるかのように。
「もしかして好きな人でもできた?」
「ちが…そんなんじゃないよ」
確かに晴樹のことは好きだ。
でも そういう対象ではない…はずだ。
「あなた。…いつでも相談乗るからね」
どこか嬉しそうな彼女にポンっと肩を叩かれ、私は小さくため息をつく。
また面倒なことになりそうだなと思っていると、今度は頭に重みを感じた。
「随分楽しそうだね」
「あ、西條先生!」
恐る恐る声のする方を見上げると そこには一番話を聞かれたくない人の姿があった。
「先生、あなたが好きな人できたんだって」
「ちょっと…理沙。そんなんじゃないって…」
「へぇ…。好きな人、ね」
意味有り気な男の言葉に、動揺が隠せない。
「…あれ、どこ行くの?」
「トイレ」
心臓が妙にうるさい。
先生に何を聞かれようと 関係ないはずなのに。
これじゃまるで…彼のことが“好き”みたいじゃないか。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。