第25話

.
4,860
2017/12/20 08:56


「そういえば、西條先生って…」


夕日が街を照らす頃。

隣を歩く彼女の声は 全くもって私の耳には届いておらず、代わりに“もう 終わりにしよう”という彼の言葉が ずっと頭の中で鳴り響いていた。


いつまでもこんな関係が続くなんて、そんなふうに思っていたわけではない。

それでも、終わりが来なければいいのにと願ったのは事実だ。



「ねぇ、聞いてる?」

「…え?あ、ごめん」



思えば、彼のことは何も知らなかったような気がする。

触れられることは多くとも、私から触れることは少なかった。
話題をつくってくれるのはいつも彼で、質問をするのだって 彼の方だった。

聞きたいことは山ほどあるはずなのに、彼への好意を自覚する度に 自信はなくなっていき。

こんなことを聞いたら 嫌われるんじゃないか。
変に思われるんじゃないか。

そんなことで頭はいっぱいになっていた。






「西條先生、好きな子いるんだって」




だから、手遅れになってしまったのだろう。




プリ小説オーディオドラマ