第31話

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2018/07/17 08:37



意を決して教室に足を踏み入れたのは、それから数分後のことだった。

音を立てないようそっと扉を引き、窓際の席で眠る彼女に近づく。


長いまつ毛とわずかに赤く染まった頬。
ふっくらとした血色の良い唇。艶やかな黒髪。


彼女のすべてが愛おしくて、
すべてに切なさを覚えた。


爽やかな風が吹き込む教室は、日が暮れると寒気を感じるくらいの気温になる。

体を縮こまらせたあなたに 着ていたジャージを掛け、その顔をのぞき込んだ。






その時だった。








「...せ、んせ.....」




目尻を伝った1粒の涙と共に、その声が聞こえたのは。




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