バンッ___
大きな音が耳元で聞こえ、目を開けようとした刹那。
私の耳のすぐ横にアイツ・・・旭飛の顔があった。
本当は、まだ可愛らしい声を出そうと思った。
きゃっ
的なの。
でも、膨よかな体型のおじさんがこっちにもたれてきて・・・
こんな声が出たのさ。
大丈夫じゃないのは旭飛の方なはずなのに。
こんな時でも私のことを気にしてくれる。
コクンとしか頷けない私。
その後はまた無言。
そのまま一駅過ぎると次が降りるところ。
降りれないだろうな・・・
なんて、思ってる私の考えを他所に彼は声を張り上げる。
身長の高い旭飛の声はよく通り、近くの人から道を開けてくれる。
開けてくれた道を旭飛の後ろから通ると、乗っている人たちからの声が聞こえてくる。
『こんな狭いところで松葉杖なんかついて・・・』
『バスでも乗ればいいのに・・・ねぇ』
『狭いところで場所をとらないでほしいねぇ』
『普通に邪魔じゃね?』
他方から聞こえる中傷の声。
自分だってなりたくてなった訳じゃないのに・・・
はぁ、と前から・・・旭飛の口から聞こえた最大なため息。
やっぱり私のせいなのか・・・
その後もずっと無言のまま歩き続けた。
でも、私はその時に決心がついた。
話そう。
色々と。
言わないといけないんじゃない。
言いたいの。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!