見慣れない無質素な白色の天井。
目を開けて初めに目に入ったのがそれだった。
…… 私、なにしてるの?
上半身を起き上がらせて、部屋を見渡す。
そこにはパイプ椅子が4つと、壁に埋め込まれたテレビがあったのは、今でも覚えている。
私は病室にいた。
そのとき、違和感に気がついた。
足首が曲がらない。
そう、骨折していたのだ。
固くギプスで固定されていた。
私、なにしてたんだっけ?
ゆーくんとピクニックに行って、それで、道路に出て …… 。
あっ、ゆーくんは!?
お母さんとお父さんはどこにいるの?
不安でたまらなくなって、ついに泣き出してしまったとき、病室にお母さんが入ってきた。
『あ、あなた!』
寄ってきたお母さんに抱きついて、『ゆーくんは?ゆーくんは?』と泣きじゃくった。
なく私を見てお母さんは、ゆーくんがいる病室に連れて行ってくれた。
コンコン。
『はい』
『失礼します』
【中尾 結】と書かれた病室に入る。
ベッドの上には、キョトンとした顔のゆーくんがいた。
頭には包帯がぐるぐる巻きだった。
『ゆーくん!』
ゆーくんの元へ駆けた。
いつもなら『あなた、どうしたの?』と太陽のような笑顔で聞いてくるゆーくん。
しかし、その時から、ゆーくんは人が変わったように態度が変わっていったのだ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。