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第14話

mother
614
2017/11/23 01:55
「あら、あなたちゃん!こんにちは」

「万祐子さん …… 」

何年ぶりだろうか。

万祐子さんとは、ゆーくんのお母さんのことだった。

ゆーくんのお母さんとは、ゆーくんが引っ越して行った日から一度も会っていない。

黒髪で肌が白く、心が強い、まさに大和撫子と言える綺麗な女性だ。

あの頃から何ひとつ変わっていない。

「ちょうどスーパーで会ってね、うちに誘ったの」

お母さんが言った。

「そう、なんだ … 」

事故のことがあったから、少し気まずかった。

私のせいだ、と、責められたりしないだろうか …… 。

「あなたちゃん、美人なお姉さんね」

しかしそんな心配はいらなかった。

万祐子さんは優しく微笑んでくれた。

「万祐子さんこそ、昔と変わらずお綺麗です」

お世辞ではなかった。

「ふふっ。… あっ、それより」

万祐子さんは何かを思い出したように話し出した。

「まさか、あなたちゃんと同じ学校の同じ部活とはね!びっくりしたわ〜」

「あっ、私もびっくりしました」

遠慮がちに微笑んだ。

「あなたも座る?」

お母さんに訊ねられたが、断っておいた。

なんとなく、落ち着かなかった。

心がザワザワする。

私は、挨拶をしてその場から逃げるように立ち去った。

今にも泣き出してしまいそうで怖かった。

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