そのあと私は彼の車に乗り込んだ。
「どこ行くの?」
今更だけど、聞いてみる。
「俺の家。」
「ふーん」
「なんかあっさりしてんな。」
「え?」
「いや、ふつーに考えて、知らない男について行くか?」
いや、それは私も思ったけど…。
「んー、まーね。」
「何かされるかもしれねーのに」
「なっ!それはしないってあなたが言ったんでしょ!?」
「今後、その言葉を真に受けたら痛い目に遭うぞ。」
「うっ、」
何も言えない…。
「どっか寄りたいとこあるか?」
んー、と考える。
「あっ、」
「なんだ?」
「…お酒飲みたい。」
「はぁ?お前、高校生だろ?何言ってんだよ。」
「今日くらい良いじゃない!」
「ダメだ。」
「お願い!あなたが買って来てくれれば飲めるのー!!!」
私は彼の肩を揺さぶった。
「うわぁ!おい!あぶねーだろ!」
ハンドルが揺れる。
「お願いだよー!」
「わかった!わかったから揺らすな!」
「やったぁ!」
「お前、これで事故ったらどーすんだよ。酒も飲めねーだろ。」
「ごめんなさーい」
「お前、気楽でいーな。」
「あははー」
なんだか楽しい。
あのまま、あそこにいたらずっと悲しみに浸って、家に帰っても暗かっただろーな。と思う。
彼について来て良かったかも…。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。