彼はコンビニで色々買って来てくれた。
梅酒とか、果汁がいっぱい入ってるお酒とか、もちろんビールも。
「やった!いっぱい!」
「そんなに呑ませねーからな?」
「えー、ケチ。」
「ケチで結構。」
ぷうっと頬を膨らませた。
しばらく走って、ふと気がつく。
「あのさ、本当に今更だけど、名前は?」
「高橋直樹だ。」
うわ!なんかいかにもイケメン!って感じがするんだけど。
高橋って聞いて一番に思い浮かぶのは担任だった。
あんなダサい人見たことない。
高橋って苗字でもいろんな人がいるんだなぁ。なんて思った。
「お前は?」
「あ、藤咲あなた。」
「ふーん。なんて呼べばいい?」
「え?なんでもいいよ。呼び捨てでも。私はなんて呼べばいい?」
「俺もなんでもいい。」
「え、それ困る。直樹さん?直樹くん?直樹?高橋ー!?」
だんだん声を大きくして聞いてみた。
「うるさい、直樹でいい。」
「んー、じゃあ、お言葉に甘えて。直樹で。」
「あ、何歳?」
「25。お前は?」
「高2だから17歳。」
車をバックさせて駐車する。
「よし、着いたぞ。」
「…えぇ!?ここ!?」
そこは高級マンションだった。
「あぁ。そうだ。」
「本当に?何の仕事してんの?」
「内緒。」
「ふーん。」
「じいちゃんがある会社の社長で金持ちだったんだよ。
んで、俺どっちも親いないから俺に遺産が全部入ってきた。だからこんな家に住んでんだよ。」
「はぁー、なるほどねぇ。って事はニート?」
「な訳ねーだろ。」
「じゃあ、」
何の仕事してんの?って聞こうとしたらすかさず、
「言わねーよ。」
と言われてしまった。
「えー、つまんなーい」
「ほら、早くしろ。」
とエレベーターのドアを開けてくれた。
「はーい。」
なんでこんなとこに住んでるのかは教えてくれるのに仕事は教えてくれないの〜?
なんて思いながら私は、エレベーターへ飛び乗った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。