「できたよー。」
と声をかける。
トーストとウィンナーと目玉焼きを皿にのせたものを出した。
料理を見た彼は、
「これくらいなら俺も作れる。」
と言う。
「いや、待って、冷蔵庫何もなさすぎだから。」
「あぁ、そうだったか。」
そのまましばらくテレビを見ながら食べる。
「今日はどうするんだ?」
「うーん、直樹さんはどーするの?」
「特に予定は無い。」
「そう…。じゃあ、どっか行こう!」
「どっかってどこだよ。」
「んー、海とか??」
「今の時期行っても入れねーだろ。」
「えー、つまんないなー。じゃあー、」
と言いかけた時、私と携帯が鳴った。
誰からかな?
「もしもし。」
『あ、お母さん。今どこにいるの?』
えっ、帰って来てるの??
「あ、えっと、友達の家に泊まりに来てる。」
『そう。今日、お父さんも帰ってくるから夜ご飯食べようと思って。』
「そう、わかった。じゃあ、早く帰ればいいの?」
『うん。よろしく。』
「わかった。」
と言っている間に切られた。
私って愛されてんのかな?
まぁ、そんなこと気にしても何も変わらないんだけど。
「親からか?」
「うん。帰って来てるっぽい。」
「じゃあ、お前も帰れ。」
やだ…。
私の答えはすぐに出た。
でも…
「…。そうだね。帰ろうかな。」
と立ち上がった。
そのあと、顔を洗ったりして、私はワンピースに着替えた。
「じゃあ、また。ありがとう。」
「おい、待て。これ、連絡先。なんかあったら連絡しろ。」
「いいの?」
「おう。」
「あはは、こんなのくれたら毎日連絡しちゃうよ?」
「別にいいさ。」
「ありがとう。またね。」
とドアを開け、外に出た。
そしてまた直ぐに、
「え、いや、待って。ここどこ?」
とドアを開けて聞く。
すると直樹さんがプッと吹き出して笑った。
「お前、バカだなぁ。」
ドキッと心臓が鳴った。
ちょっと待って。
その笑顔は反則。
今まで笑わなかったのに、そんな笑顔見せられたら…。
好きになっちゃうじゃん。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。