「千紗おはよー!」
昨日はあれから結局、直樹さんからの連絡はなく、親との食事も無くなった。
せっかく帰って来たのに、なんだよって感じだよね。
「おはよー」
「あ、そう言えばあなた。今日、日直でしょ?さっき高橋せんせー呼んでたよー?」
「あ!うそ、忘れてたわ。ちょっと行ってくる!」
高橋先生は、私のクラスの担任。そして化学の先生でもある。
髪の毛ボサボサで、メガネかけてて、白衣着てて…。
正直言って、ちょーダサい。
それに、気が弱いし、なんかオドオドしてるけど、何だかんだみんなに愛されキャラになってる。
コンコン
「失礼しまーす。高橋せんせー?」
先生が居るのはいつも化学準備室。
他の先生とあんまり関わりたくないみたい。
「あ、藤咲さん。おはようございます。」
クルッと椅子をこちらに向けた。
「おはよーございます。」
「これ日誌です。よろしくお願いしますね。」
「わかりました。」
と、日誌を受け取る。
すると、チャイムが鳴った。
「あと5分でホームルームですね。僕も一緒に行こうかな。」
よいしょ。
と立ち上がった。
ん?
なんかこの匂いどこかで嗅いだことあるような…。
「藤咲さん?どうかされましたか?」
「あ、いえ。なんでもないです!」
なんの匂いだろう?
「じゃあ、行きましょうか。」
「はい。」
私は先生の後について教室へ向かった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!