「大丈夫か…?」
先生はパトカーが去った後、聞いてきた。
私はその言葉を聞かなかったことにして言う。
「じゃあ、先生またね。来てくれてありがとう。嬉しかった。」
私は作り笑いをしていった。
「お前…」
先生…。
本当は、
本当ね大丈夫じゃないよ。
でもね、先生に迷惑かけちゃう。
だから…。
あ、やばい。
また、泣いちゃう。
私は泣く前に家の中に入ろうとした。
「待て。」
先生は私の手首を掴んで、私を振り向かせた。
あぁ、なんでよ。
引きとめないで。
もう…。
一筋の涙が頬を伝って流れていく。
先生は一瞬驚いたような表情をし、私をしっかり見つめて言う。
「もう一度聞く。」
「大丈夫か?」
「…大丈夫」
「…じゃ、ない…。」
私の目から涙が次から次へと溢れ出てくる。
そして、私は先生に手を引かれて車に乗せられ、先生の家で泊まった。
「おやすみ」
「おやすみ。」
「先生、手…繋ぎたい。」
すると手を握ってくれた。
この温もり、あたたかさが私を安心させてくれた。
ねぇ、先生。なんで私にこんなことまでしてくれるの?
なんで…?
生徒だから…?
ねぇ、先生。教えてよ…。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!