第59話

Chapter 59
5,256
2017/12/29 09:14
ー放課後ー

今日一日、先生と一回も目を合わせなかった。

何か先生は言いたそうだったけど、私は上手くすり抜けた。


「あなたー!いつものとこ行こ!」

千紗が元気よく声をかけてきた。

気を使ってるのかな?

「うん!行こー!」

私も元気よく返した。

いつものとこ。とは、駅の裏にある、小さな喫茶店。

いつも人は少ないけど、どれもすっごく美味しくて私達にとって、穴場である。


カランカラン

ドアをかけると、ドアベルが鳴る。


私は、ホットケーキとミックスジュース。千紗はチョコレートパフェとミックスジュース。

ちょっと、カロリーが…。と二人で笑いながらもそれらを注文した。


「お待たせしました。」

いつもの優しそうなおじいちゃんが運んで来てくれた。

「美味しそ〜!」

2人で、歓声をあげる。

「いつも来てくれてありがとう。これ、さっき焼いたんだ。もしよかったら食べてね。」

と、クッキーをくれた。

「ありがとうございます!」

やったー、と言いながら、私達は少しずつ食べ始めた。



しばらくして、私は切り出す。

「じゃあ、そろそろ本題に入ろうかな。」

「うん、いいよ。ゆっくりでいいからね。」

千紗は優しくて微笑む。


「実はね…先生に告白したの。」


「うん、」

千紗は声を上げることなく、静かに言った。

「それでね、」


あぁ、どうしよう。



何から話せばいいかわかんないし、思い出したらまた泣いちゃう…。



「ゆっくりでいいよ、あなたが話し終わるまでちゃんと聞いてるから。」


私は黙って頷く。

「ありがとう。」

「それでね…」

私は、千紗にもわかるように最初から順を追って話した。



「そうだったんだ…。でも、あなた。よく頑張ったね!」

「千紗ぁ。もう、大好き〜」

私はそう言いながら泣いた。

「ちょ、なんで泣くのよー。」

「嬉しくって、」

「しょーがないなぁ。」

よしよし、と私の頭を撫でてくれる。




「でも、あなた。本当に諦めるの?」

「うん。」

「好きって分かってるのに?」

「うん。」

「なんで?」

自分でもよくわらない。

でも…


「実らない恋だから…。それと、先生に迷惑かけちゃう…」



「はぁ!?何言ってんの?」



「実らない恋でも、してる人たっくさんいるじゃん!実らない恋だからダメとか誰が決めたの!?


それに、先生が迷惑だ。って言ったの!?そんな奴なら諦めていいけど、


先生ならそんなこと言わないってあなたが一番よく分かってるでしょ!?」



私は千紗の言葉を聞いて、涙が溢れる。


私も、実らない恋でも、恋してたい。


でも、先生を好きになったら…。


「…千紗。」


「ん?」


さっきとは打って変わって優しく返事をしてくれた。




「私、もう、どうしたらいいかわかんない。」




「でも、でも…。」





「好きなんだよなぁ…。」





うわぁ。とまた私は泣く。


「うん、うん、そうだよね。」


「あなた。何かあったらすぐ私に言ってね。あなたは一人じゃないんだから。」


「ありがとう。」


うん、そうだよ。


私は一人じゃない。


千紗がいる。


私は千紗が大好き。


千紗、いつもありがとう。


今度は私が支えられるように頑張るね。

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