____伝えたいことがあった。
眩しいくらいの光、桜の木の下、虹の架かる青空。
そこで僕は一人の女性を待っていた。
君に告白をした。
初めて"恋人"が出来た。
初めて自分よりも大切な人が出来た。
初めて守りたい人が出来た。
君と旅行へ行った。
君の近くにいるはずなのに、初めて知ったことの方が多かった。
君はほんとに美しかった。
君と結婚をした。
これから楽しみだね、なんていいながらゆっくり時の流れを感じたね。
君はいつでも綺麗だった。
君に子供が出来たと言われた。
その時はとても驚いたし、とても泣いてしまったね。
パパになれる嬉しさと、これから生まれてくるいのちの大切さ、それに気づくことが出来たよ。
君との子供が生まれた。
初めて見た赤ちゃんは小さくてとても可愛かった。
何も出来なくてごめんね、苦しそうなのをみてるだけでごめんね。でもとても嬉しかった。
口元は僕に似ているね、髪の毛は君かな?
これからの人生に胸が膨らんだ。
君と結婚してから初めて喧嘩をした。
今まで無かったのに、初めてぶつかったね。
子供も泣かせてしまった。僕が悪かったのに…ごめんね。
君との子供が結婚をした。
最初は他の人の所へなんて行かせたくなかったけど、幸せそうな顔をしてたね。
いつかの君のような顔をしてたよ。幸せそうな顔をしてた。ほんとだよ?
君と二人でいる時間が増えた。
昔のようにはしゃぐことは出来なかったけど、お茶でも飲んで昔のように話していたね。
時が止まればいいのに、そう何度願ったことか。
君といる夢を見た。
川が流れてて、君は僕に手を伸ばしてた。
僕は君のことをずっと忘れない、忘れてない筈だったのに。
僕は伸ばす手を無視して川の先へと足を踏み込んでしまった。
時は流れ、僕はひたすら君を待っていた。
皆が橋を渡っていく中、僕は桜の木の下でずっと君を待っていた。
「……ほんとにバカね。」
ふと、そんな声が聞こえた。
それは僕の愛しい愛しい最愛の人の声だった。
『……ごめんね。』
声が上手く出なくて、震えてしまって、
深いしわが刻み込まれた頬に流れた液体は僕の心も潤していった。
「……こちらこそ、来るのが遅れてごめんね。」
二人が別れた川の上には、虹がかかっていたとか。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。