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第4話

【待ち人の忘れ物】
27
2017/12/10 14:21



____伝えたいことがあった。



眩しいくらいの光、桜の木の下、虹の架かる青空。


そこで僕は一人の女性を待っていた。




























君に告白をした。
初めて"恋人"が出来た。
初めて自分よりも大切な人が出来た。
初めて守りたい人が出来た。









君と旅行へ行った。
君の近くにいるはずなのに、初めて知ったことの方が多かった。
君はほんとに美しかった。







君と結婚をした。
これから楽しみだね、なんていいながらゆっくり時の流れを感じたね。
君はいつでも綺麗だった。











君に子供が出来たと言われた。
その時はとても驚いたし、とても泣いてしまったね。
パパになれる嬉しさと、これから生まれてくるいのちの大切さ、それに気づくことが出来たよ。










君との子供が生まれた。
初めて見た赤ちゃんは小さくてとても可愛かった。
何も出来なくてごめんね、苦しそうなのをみてるだけでごめんね。でもとても嬉しかった。
口元は僕に似ているね、髪の毛は君かな?
これからの人生に胸が膨らんだ。










君と結婚してから初めて喧嘩をした。
今まで無かったのに、初めてぶつかったね。
子供も泣かせてしまった。僕が悪かったのに…ごめんね。











君との子供が結婚をした。
最初は他の人の所へなんて行かせたくなかったけど、幸せそうな顔をしてたね。
いつかの君のような顔をしてたよ。幸せそうな顔をしてた。ほんとだよ?









君と二人でいる時間が増えた。
昔のようにはしゃぐことは出来なかったけど、お茶でも飲んで昔のように話していたね。
時が止まればいいのに、そう何度願ったことか。








君といる夢を見た。
川が流れてて、君は僕に手を伸ばしてた。
僕は君のことをずっと忘れない、忘れてない筈だったのに。
僕は伸ばす手を無視して川の先へと足を踏み込んでしまった。































時は流れ、僕はひたすら君を待っていた。
皆が橋を渡っていく中、僕は桜の木の下でずっと君を待っていた。

















「……ほんとにバカね。」



















ふと、そんな声が聞こえた。
それは僕の愛しい愛しい最愛の人の声だった。

















『……ごめんね。』


















声が上手く出なくて、震えてしまって、
深いしわが刻み込まれた頬に流れた液体は僕の心も潤していった。



















「……こちらこそ、来るのが遅れてごめんね。」









































二人が別れた川の上には、虹がかかっていたとか。


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