俺は必死に奏音を探した。
……あいつはいつも、何かある度にあそこに行く。
心を落ち着かせるために。
俺は3階に階段を登ろうとしたが、
すぐ方向を変え、2階にある図書室に向かった。
「奏音!!」
いるかどうかも分からないのに俺は、奏音の名前を叫んだ。
「っ……」
やっぱり…いた。
泣きながら俺の方を見る。
早く……謝らないと…。
「奏音…さっきは…」
「"謝らなくていい。全部私が悪い"」
「何言ってっ_」
「"だって私…今まで何も変えようとしてこなかった。"」
「……」
「"みんなが優しいから、このままでもいいんだって思ってたんだと思う"」
そんなの…当たり前だろ…
「"だから私、ちゃんと変わるね"」
「いや…けどっ…」
「"けどすぐには変われないの"」
奏音は俺が言おうとした事を分かっていたかのように、
紙に書かれた文字を見せてきた。
「"だから、ごめん。地域PRは…出ないね。"」
「………本当にそれがお前の答えか?」
「"うん"」
奏音は真っ直ぐ俺を見てくれていた。
この言葉は…本気だ。
「……分かったよ。けど、さっきは本当にごめんな。」
「"大丈夫だよ"(ニコッ」
すぐ笑ってくれた。
俺はその笑顔に…何度救われたのだろうか。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!