一ヶ月後。
「今日から保険の先生の、春野裕紀先生だ」
裕紀先生は保健室の先生だった。
白衣を着て、先生より若い先生だった。
女子から人気があって、保健室はいつもにぎやか。
「先生・・お腹痛いんですけど、ベットで休んでもいいですか?」
ある日の五時間目。
保健室のベットで休んでいた。
「兄貴と付き合ってるの?」
「え?どうしてですか?」
「前、ベットにいたでしょ?」
「え?ううん」
「そっかー」
裕紀先生は私と先生の事を知っていた。
コッホ。コッホ。
「気持ち悪・・・」
調子が悪過ぎて、早退した。
「病院行こ・・・」
市民病院に行った。いきなり・・・。
「産婦人科紹介しますね」
「え?なんでですか?」
「一応です」
「はい・・」
妊娠してる可能性はあった。一回だけ・・・。
怖い・・不安でしょうがない。
先生・・・!先生!
「大丈夫か?」
先生の声がした。顔をあげるとそこには先生じゃなくて裕紀先生だった。
「先生?」
「一応、俺保険の先生だから」
先生はそう言って隣に座った。
「智輝先生は・・?」
「出張」
「電話できないかな?」
「はい。電話番号」
メモを渡された。そこには電話番号がかかれていた。
プルプル・・・。
受話器をもって十分。
電話は通じなかった。
「先生ですか?」
「はい。」
「佐藤さんは、妊娠してませんよ。ただの体調不良です」
そう聞いた後。ファミレスにいった。
「すみません。お騒がせして」
「・・・兄貴と付き合ってるの?」
「・・・」
いつも大切なときに隣にいるのは裕紀先生だった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!