一か月が経った。
あの一件があって、沖田さんは、頻繁に遊郭を訪れるようになった。
そして、決まってわたしを指名してくれる。
「今日はお土産持って来た」
「え、ほんとですか?」
「はい、砂糖菓子」
そう言って沖田さんは桜色の包み紙を差し出した。
開けると、鮮やかな金平糖が入っていた。
「うわぁ、すごくきれい……」
「いつもすぐに売り切れるんだ」
「っ……ありがとうございます」
わたしたちは、金平糖の話で盛り上がった。
沖田さんは甘いお菓子が好きだった。だから、いつもお菓子の話をした。
わたしは、沖田さんが楽しそうに話す姿を見るのが好きだった。
お菓子の話をする沖田さんは、子どもみたいだった。
それから、いつものように飲み交わした。
いつものようにおしゃべりをして、冗談を言って笑う。
お酒がなくなったら頼んで、また飲む。
それの繰り返し。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。