「ーー沖田さん」
「え」
戸惑った沖田さんの声。
わたしは、無意識に沖田さんの服を掴んでいた。
「どうしたの?」
「沖田さん……わたし……」
「うん」
「わたし……あの……」
べつになにも変えなくてよかった。
このままでよかった。
触れようとはしない沖田さん。
その優しさが痛いほど伝わっていた。
いつも冗談めいて、わたしを笑わせる。
そんな沖田さんが大好きだった。
だから、このままでも十分だった。
会いにきてくれて、お酒を飲んで楽しく話せる関係。
それだけで、満足だった、
ーーはずだった。
それなのに……。
「わたし……えっと……っ」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。