『大丈夫ですよ』
誰…?
これは、誰の声…?
どこかで聞いたことがあるような気がするこの声…。
優しくて、どこか落ち着く、そんな声だ…。
真っ白な、ただ真っ白な、
窓さえない四角い部屋の中、
『大丈夫です。私が側にいますから』
姿もなく、ただ上から声が聞こえてくるだけ…。
この声は…いったい誰の?
誰の声だっけ…
ハッと目を覚ますと、
見慣れたいつものホテルの部屋…。
必要以上に柔らかいキングサイズのベッド。
そしてベッドに横たわる俺の横には、
派手な金髪がやたらと目立つ見慣れない女…。
クスクス笑いながら俺にワイングラスを手渡すその女は、そういえば昨夜仕事で会った女だ。
顔は普通だし、あまりよく知らない女優さんで…。
あれ、でもどうして?
仕事帰りに食事して、帰って…
あれ、そっからどうしたっけ?
そこからの記憶が一切ない…。
ふとベッドを見ると、乱れたシーツ。
まさか…
うざー…今日も泊まっていこうと思ってたのか。
俺は普段女に怒鳴ったりなんてしないから、
驚いたのか女はビクリと肩を揺らし、床に散乱した服を慌てた様子で拾い集め、
服を身にまとうと、
寂しげにそう言い残し部屋を出ていった。
またって…もうこなくていいっつーの!!
あぁーなんかイラつく。
いつの間に…まさか俺が酒飲んでることいいことに…
考えるだけでゾッとする。
無理だ…あーいうの。
押しが強い奴よりたち悪いじゃん。
イライラを静めるように、
グラスに残ったアルコールを一気に喉に流し入れた。
そういやー、あの夢はなんだったんだろう。
何度も耳に響くあの女の声…。
最近よく同じような夢ばかり見る…。
なんか呪われてんのかな、俺(笑)
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。