第15話

story *涼介side*
905
2018/05/28 23:13
ーコンコン。
知念 侑李
涼介ー?入るよー
山田涼介
…どぞ?
知念 侑李
ねぇ涼介、
さっき金髪の女の人が泣いてたんだけど…ひょっとして…?
山田涼介
知念 侑李
あーまた女の子泣かせちゃってー。
いーけないんだー!
山田涼介
ちょっと強く言っただけだよー
知念 侑李
遊びもほどほどにしなきゃー、だよ?
山田涼介
…うるさいよ。
てか何、それ言いにきたの?(笑)
用がないならさっさと帰ってもらいたい…。
全然寝足りないから、もう一度寝たいし。
そんなことを思いながら、あくびを噛み殺す。

すると、
そんな俺の背後に回り、
知念はニッコリと微笑んだ。
知念 侑李
コレ
知念は何が嬉しいのかニコニコしている。
ニコニコしながら手渡されたのは、
"東高等学校"と書かれた紺色の小さな手帳だった。
これは…生徒手帳?
山田涼介
…どしたの、これ
手渡されるままに受け取り、
怪訝な表情でその手帳を見る。
知念 侑李
生徒手帳でしょ
山田涼介
いやいや、それは分かるけど…
誰の?
そう問いながら、手帳をパラパラとめくる。
そして最後のページに書かれたプロフィール欄を目にし、めくる手を止めた。
山田涼介
広瀬…李奈…
氏名欄に書かれたその名前に、眉をひそめる。
広瀬莉奈ってこの前のあの…
山田涼介
あの子…?
あの背が小さくて、
おっとりしたような感じの女の子。
うん、この子のことはしっかり覚えてる。
知念 侑李
落ちてたんだよそれ。きっとそれなきゃ困るだろうし
そう言って、
なぜかニヤニヤと気色悪く微笑む知念。
山田涼介
んだよ、その顔
知念 侑李
んー?なんでもー
山田涼介
なんかあんだろ
知念 侑李
…届けてあげなよ?涼介くん
山田涼介
はっ!?ちょ、なにいってんの?
何で俺!
拾ったの知念なら知念が届ければいいじゃんか!
てか、どこに!?
知念 侑李
ほら、
ここちゃーんと住所書いてあるし。
そこまで遠くないしね
そう知念が言うとおり、プロフィール欄には名前や住所、血液型や生年月日までビッシリと書かれている。
こんな個人情報をこんな律儀に書く人いるんだ…
あーでも、あの子はそんなタイプかも。
何となくわかる気がする。
知念 侑李
李奈ちゃんを連れてきたのは涼介でしょ?
なら責任持って渡してあげてよ
山田涼介
…そうだけど
知念 侑李
…あ、あの子と繋がってればあの綺麗なお姉さんともまた会えるかもだし!?
知念のその言葉に、思わずピクリと眉が動く。
…そうだった。
そもそも俺がいいなーって思ってたのはあの子じゃなく、あの子の隣にいた女だ。

でもなんだろ。
もうそんなのどうでもよく思える。
あの子のお姉さんに会う為にあの子に会う、とか…
そんなことしたくない。
あの子を使うとか、そういうの、なんか無理だ。

あれ?俺こんなんだっけ?
知念 侑李
ま、それは涼介にお任せするから!じゃ、バイバイ~
そう言い、部屋を出ていく知念。
山田涼介
はぁ……何で俺が…
知念は多分、俺がまだあの綺麗な子を狙ってると思ってるんだろうなぁー。
全くそんな感情、今はないんだけど。
そう苦笑いしながら、
手の中にある生徒手帳を見つめる。
山田涼介
広瀬李奈…か
姉妹なのに、あのお姉さんとはえらい違いだな。
多分、彼氏とかそういう経験ないんじゃないか?
キスさえ、したことないっていってたし…。
俺からしたら、ただの子供。
なのに…
山田涼介
…なんだろ、
何かがひっかかる…。
でも何がひっかかっているのかは分からない。


ま、考えてても仕方ないか!
テーブルに置いてあったワインを全て飲み干し、
俺はゆっくりと目を閉じた…。

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