ーコンコン。
用がないならさっさと帰ってもらいたい…。
全然寝足りないから、もう一度寝たいし。
そんなことを思いながら、あくびを噛み殺す。
すると、
そんな俺の背後に回り、
知念はニッコリと微笑んだ。
知念は何が嬉しいのかニコニコしている。
ニコニコしながら手渡されたのは、
"東高等学校"と書かれた紺色の小さな手帳だった。
これは…生徒手帳?
手渡されるままに受け取り、
怪訝な表情でその手帳を見る。
誰の?
そう問いながら、手帳をパラパラとめくる。
そして最後のページに書かれたプロフィール欄を目にし、めくる手を止めた。
氏名欄に書かれたその名前に、眉をひそめる。
広瀬莉奈ってこの前のあの…
あの背が小さくて、
おっとりしたような感じの女の子。
うん、この子のことはしっかり覚えてる。
そう言って、
なぜかニヤニヤと気色悪く微笑む知念。
何で俺!
拾ったの知念なら知念が届ければいいじゃんか!
てか、どこに!?
そう知念が言うとおり、プロフィール欄には名前や住所、血液型や生年月日までビッシリと書かれている。
こんな個人情報をこんな律儀に書く人いるんだ…
あーでも、あの子はそんなタイプかも。
何となくわかる気がする。
知念のその言葉に、思わずピクリと眉が動く。
…そうだった。
そもそも俺がいいなーって思ってたのはあの子じゃなく、あの子の隣にいた女だ。
でもなんだろ。
もうそんなのどうでもよく思える。
あの子のお姉さんに会う為にあの子に会う、とか…
そんなことしたくない。
あの子を使うとか、そういうの、なんか無理だ。
あれ?俺こんなんだっけ?
そう言い、部屋を出ていく知念。
知念は多分、俺がまだあの綺麗な子を狙ってると思ってるんだろうなぁー。
全くそんな感情、今はないんだけど。
そう苦笑いしながら、
手の中にある生徒手帳を見つめる。
姉妹なのに、あのお姉さんとはえらい違いだな。
多分、彼氏とかそういう経験ないんじゃないか?
キスさえ、したことないっていってたし…。
俺からしたら、ただの子供。
なのに…
何かがひっかかる…。
でも何がひっかかっているのかは分からない。
ま、考えてても仕方ないか!
テーブルに置いてあったワインを全て飲み干し、
俺はゆっくりと目を閉じた…。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。