第17話

story *涼介side*
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2018/01/03 08:11
広瀬 李奈
凄い美味しい!!
さっきまでの不安げだった顔を豹変させて
凄く美味しそうに料理を食べている李奈。
こんな美味しそうに食べる女、初めて見た。
山田涼介
そんなに気に入った?
広瀬 李奈
はい!とっても!!
さっきとは打って変わって、
コロコロと変わる表情に、
なぜだか拍子抜けしてしまう。
本当に、嬉しそうな顔。
作った顔なんかじゃない。
ちゃんと素を出してくれてる。
こうちゃんと喜んでくれてるの見ると、
また連れていってやりたいなーなんて思える。
って何考えちゃってんの俺(笑)
広瀬 李奈
あの。私、実は軽音演劇部なんです!
唐突に発された言葉に「は?」と思わず口を開く。
…軽音演劇部?
それって、演劇部と軽音部が合体してる、感じ?
いきなり何言い出すんだ
広瀬 李奈
小さい時からずっと演技とか歌ったりするのが大好きで
山田涼介
…うん
広瀬 李奈
だから、高校でも演劇部と軽音部はいってて
山田涼介
…うんうん
広瀬 李奈
勉強とかスポーツとか、そういうの全然ダメなんですけど、でも、演技とかだけは得意っていうか。
それしか自信持てなくて。
将来は、演技とか歌とか。
そういうのを仕事にできたらなって思ったりしてて
山田涼介
広瀬 李奈
だからこうやって山田くんとお料理食べれて、話せて、凄く嬉しくて…
心から、嬉しそうな表情。
上ずった声で話す姿は、まるで子供みたいで。
じっと聞いているとなぜだかおかしくなって。
思わず笑うと、李奈はハッとした様子で恥ずかしそうにうつむいた。
広瀬 李奈
す、すみません!
私、つい嬉しくてはしゃいじゃって。
あー…今の忘れてください~
そう言って李奈は顔を赤くする。
山田涼介
無理。忘れられないよ。
あんな真剣に言われたら頭に残るよ(笑)
広瀬 李奈
そ、そんな…
山田涼介
いいんじゃない?
夢はでかくなきゃ~だよ
俺はある歌詞を思い出しながらそう言った。
すると
広瀬 李奈
フフッ。
それって『100%勇気』ですか?(笑)
李奈は笑いながらそう言ってきた。
当てられちゃった(笑)
山田涼介
そうそう(笑)
李奈は元が良いから女優とか向いてると思うしね。
歌は…聴かなきゃわかんないけど(笑)
広瀬 李奈
ほ、ほんとですか!?
広瀬 李奈
あっ…ご、ごめんなさい。
はしゃぎすぎちゃいました…
山田涼介
そんなん気にしなくていいって
…それにしても、李奈は色気より食い気だな(笑)
なんていうか、子犬みたい。
コロコロ表情変えるし、見てて飽きない。
…なんだか、一緒にいて楽しいし、面白い。

ー俺は頬杖をつきながら、そんなことを思った。

ランチコースを平らげ、
俺たちは店を出てまた歩き出した。
広瀬 李奈
ご馳走さまでした!
本当に、ありがとうございます!
山田涼介
いいえ
やたらと警戒してたのが嘘のように、
「美味しかったです」と李奈は笑顔を見せた。

え…?
今一瞬、なんか…変な感じ?になった。
なんていうのかな、この感じ。
胸が締め付けられるような感覚?

何だろ、この感覚…。
俺がそう考えていると後ろから
「あの…」とか細い声が聞こえた。
山田涼介
ん?
広瀬 李奈
山田くん、
この前のライブ凄く良かったです。
感動でした!!
思いがけない言葉に、俺は思わず振りかえる。
広瀬 李奈
山田くんの歌声…ほんっと好きなんですよ私。
生歌、キレイすぎました!
私、山田くんが好きだったんですよ。
山田くんの演技、歌、トーク。
全てがもう本当に大好きで。
それからHey!Say!JUMPが好きになったんですよ。
Hey!Say!JUMPって仲良しそうだし、
面白いし、見てて楽しいんで(笑)
少し恥ずかしげに、でも、素直にそう言葉を発した李奈に何を返したらいいのか分からずたちつくしていると、「でも…」と、また口を開いた。
広瀬 李奈
私のお姉ちゃん。由奈ちゃんは、ずっとHey!Say!JUMPのファンで、山田くんのことが凄く好きで…
李奈は少し口ごもりながらも、また言葉を紡いだ。
広瀬 李奈
だから…この前みたいに、山田くんが一夜限りの関係の為にお姉ちゃんを呼び出そうとしたって知ったら、
きっとお姉ちゃん、悲しみます。
悔しそうに、悲しそうに、そう言った李奈に思わず俺は目を見開いた。
広瀬 李奈
私、Hey!Say!JUMPの山田涼介が好きだけど、
今目の前にいる山田くんは好きになれません!
お姉ちゃんを弄ぶようなことはしないで下さい。
お願いします…
ー真っ直ぐな二つの瞳は澄んでいて、
ひとつの濁りもない。
そんな李奈の瞳を見ていたら、
なぜだか自分がひどく汚い人間のように思えた。

この子は…凄いな。
自分のことじゃないのに。
ほかっとけばいいのに。
こんなに真剣になって。

おまけに、Hey!Say!JUMPの俺は好きだけど
目の前にいる俺は好きじゃない。なんて…
初めて言われた。
李奈って本当に変わったやつ。
好きじゃない。なんて言われたらむかつく。
でもなぜだか、悲しくなった。
どうして?
なんでこんなに李奈の言葉が心に刺さるんだろ…。

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