第19話

story *涼介side*
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2017/12/26 08:38
山田涼介
…あっつ…
なんだ…この熱さ…。
体が焼けるように熱い。頭がガンガンする。
山田涼介
…いってー…
全身に力が入らない。
どうしたんだろ、俺。
やけに重い瞼をゆっくりと開けようとした、
その瞬間だった。
広瀬 李奈
山田くん、気づきました?
耳元をくすぐる女の声にハッと我に返った。
開けた視界に飛び込んできたのは…。
山田涼介
え、…
黒いボブヘアー、澄んだ大きな瞳。
あぁ、李奈だ…。

…え、、
山田涼介
はっ!?
思わず飛び起きた。
見慣れた白い壁。
ドでかい薄型テレビ。
カーテンから注ぐ日の光。
モノトーンの飾りっけのない部屋。
見慣れたこの光景は、
間違いなく俺の住んでるマンションの寝室…。
でも…、
広瀬 李奈
あ、まだ起きちゃダメですよ!
熱あるんですから!
いつものベッドの上にいる、俺。
そしてその横に当たり前のようにいる李奈。
…いや、待って。
今どういう状況なわけ?
山田涼介
ちょっと待って!何でここにいるの?
このあり得ない状況に、思わず声をあげたが。
そんな俺に、李奈は構わず言葉を続ける。
広瀬 李奈
あ、お水飲みますか?
なんで俺の部屋にいるの!?
しかも、当然のように!!
山田涼介
…人の話、聞けないとか…犬以下…。
そう俺が小声で李奈には聞こえないように言ったが、聞こえてしまったらしく、李奈はムスッとした様子でベッドの側に歩いてきた。
広瀬 李奈
犬以下だったらこんな風に山田くんを看病することなんてできませんよーだ!
山田涼介
うわ、地獄耳?(笑)
広瀬 李奈
もう!!違います!!
山田涼介
てか何でここにいんの?
広瀬 李奈
山田くん、覚えてないんですか?
李奈は困ったように息をはいて、
俺の額にそっと手をおいた。
広瀬 李奈
熱は下がりましたね。良かった
山田涼介
…っ!
な、なんだコイツ…。
経験も乏しくて、
キスさえまともにしたことないくせに。
何で普通に平然と俺に触れてるんだ!?
あーわけわかんない。
ていうか、ここに李奈がいること事態、おかしい。
俺は今まで絶対に女だけは部屋には上げなかったのに…
それだけは絶対だったのに。
…李奈は女。そして、俺の部屋にいる…。
なんで!?
何も覚えてないよ!
広瀬 李奈
山田くん、物凄い高熱あったから、
すぐタクシー呼んだんですけど、
山田くん家、どこかわかんなくてどうしようって迷ってたら山田くんが運転手さんに住所教えてくれて、
ここに来たんですよ
山田涼介
マジか…
そうだったのか。 だからか。
体がやたら熱かったのは。
てか俺が教えたんだな。
全然、覚えてないわ。
広瀬 李奈
スミマセン。
勝手に上がり込んじゃって。
お節介かもしれないけど、放っておけなかったし…
そう言って、
うつむいて申し訳なさそうな顔をする李奈。
…表情が本当にコロコロ変わるんだなー。
さっきまではお姉ちゃんに手出さないで!って俺に怒ってたくせに。強気だったくせに。
ビクビクして、悲しそうな顔したり。
かと思ったら、急に怒り出したり。
…変な奴。
広瀬 李奈
あの…これ良かったら食べて下さい。
勝手にキッチンお借りしてすみません
そう言って李奈がトレーにのせて差し出したのは、
湯気を立てて良い匂いを放つ、お粥。
どこかで買ってきたのか、ペットボトルよスポーツドリンクまでも用意されてる。
広瀬 李奈
それから、一応解熱剤も買ってきたんですけど…
あれ?どこいったんだろ
そう言ってゴソゴソと、自分の鞄の中をひっくり返して中身を広げる李奈。
広瀬 李奈
ごめんなさい!どっかいっちゃった(笑)
そう言って笑みを浮かべる李奈。
…無邪気な笑顔。
そういえば、レストランでもそうだったな。
コイツ、凄く楽しそうで。
本当に嬉しいんだなーってわかる。
うわべだけじゃなくて、心から。
色気のない子供だけど、
こういう純粋な笑顔がだれより似合ってる。
そんなことを思いながら、
山田涼介
ねぇ、食べて、いい?
いつの間にかそう呟いていた俺は、
多分李奈のおかしなペースと熱に冒されたんだろう。
広瀬 李奈
へっ?!
キョトンとした顔で俺を見る李奈に、
山田涼介
だからー。食べていい?
もう一度そう言って、
ジッと熱っぽく、その黒い瞳を見据えて李奈の手首を強く握った。
…が、
広瀬 李奈
食べてくれるんですか!?お粥!
その的外れな言葉に、ガックリと項垂れてしまう。
山田涼介
アホか。…李奈をだよ
そう言った俺に、李奈の顔はボッと赤くなった。
広瀬 李奈
な、な、な…何言ってるんですか!?
やっぱまだ熱あるんじゃないですか!?
山田涼介
熱なんかないし。
冗談だよ。バーカ
広瀬 李奈
ちょ、そういう冗談やめて下さい! 変態!!
必死になって俺の手を振りほどこうとする姿に、
思わず微笑む。
山田涼介
…いいな
広瀬 李奈
え?
山田涼介
こういうの、なんかいい
今まで大体受け身だったから、
こういうの何か新鮮で、案外、好きかもしれない。

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