第23話

story *李奈side*
814
2017/12/29 12:05
ー何でこんなに拒むことができないんだろう。
別に拒んで何かされるわけでもないのに。
どうして私はこんなにもこの人と離れたくないと思ってしまってるんだろう…。

「はぁ~」と長いため息をつきながら、
車の窓から見える外を眺めた。
私の家は、山田くんのマンションから車で30分くらいの場所にあるらしい。
山田くんが運転する車で、
こうして送ってもらうなんて…。
あまりにも、恐れ多い気がして。

ふと、夜なのにサングラスをはめ、
車のハンドルをきる山田くんに目をやる。
やっぱどんな時でも周りを気にしなきゃダメなんだなぁ。サングラス外せるのなんて家とかくらい?
山田涼介
…?何?
広瀬 李奈
あ、いえ。別に何も
山田涼介
もしかして、緊張してる?(笑)
ふいにそう聞かれたのは、
きっと私が緊張でガチガチになって山田くんと1度も目を合わせようとしないからだろう。
だってこんな芸能人と車の中、
二人きりとか緊張しちゃうよ!!
綺麗な車内からは、
凄く大人っぽい良い香りがする。
山田くんがいつもつけてる香水の匂い。
ジャケットの袖を捲り上げて
ハンドルを握る山田くん。
もうその姿だけで絵になった。
広瀬 李奈
し、してませんよ別に
山田涼介
嘘。絶対してる!
広瀬 李奈
もう!だからしてませんってば!
思わずむきになって言った。
すると
山田涼介
そう?(笑)
そういえばさ、李奈って身長低くない?(笑)
なんて…バカにしたように言ってきたのです!!
あり得ない!!
私が一番言われたくないことをよくも!
広瀬 李奈
150㎝もあります!
山田涼介
150㎝"しか"ない。だろ?(笑)
広瀬 李奈
あー!
1番言われたくないことをよくも!!
もー山田くんでも許せませんよー!!
広瀬 李奈
てか、チビな山田くんに言われたくありませんよーだ
私も少しバカにしたような言い方をして、
軽くべーっと舌を出してやった。
だって、そんな身長差ないんだもん私と山田くん。
150㎝と155㎝くらいじゃないかな?(笑)
山田涼介
はぁ!?テメ…
山田くんはテメ…と何か言おうとして、
ストップした。
もしかして、テメーって言おうとしたのかな?
ひょっとして、
テメーって普段は使ったりしてるのかな?
別にそういう言葉使ってくれて全然いいのに。
むしろそっちの方が話しやすそう…。
山田涼介
悪い
広瀬 李奈
…え、何が…?(笑)
私、あの普通に話してもらえると有難いです
山田涼介
…へ?
広瀬 李奈
さっき、テメーって言いそうになったんじゃないですか?
山田涼介
あ、うん。まぁね(笑)
広瀬 李奈
そういうの、全然言ってくれて大丈夫ですよ!
むしろそっちの方が話しやすいんで嬉しいです。
山田涼介
ほんと?
じゃ、これからは普通に話すな!
広瀬 李奈
はい!!
山田くんが初めて、
ニカーッとクシャッと笑ってくれた…。
そんな山田くんを見ていたら、
なんだかまた胸がドキドキしてきて…
おかしくなる。
…そんな不純なことを考えていたら、
山田涼介
ん、この辺か?
ふいに聞こえてきた山田くんの声に、
ハッと我に返った。
気がつけば、もう車は私の家の近くに来ていて。
私は慌てて鞄を握り直した。
広瀬 李奈
あ、ここで大丈夫です!
もうすぐそこ家なので。
ありがとうございました!
そう言って、頭を下げ、シートベルトを外した。

…もう、きっと二度と会うことはないんだ。
会えるとしたら次のliveかな?
でもきっと、こうして二人きりで会うことはない。
そう、思った。
でもそれは別におかしなことじゃない。
むしろ、今の状況こそがおかしいんだし。
…だから、
こうしていることが夢みたいなことなんだよね。
それは分かってる。
分かってるの。
…でも、どうして?
少しだけ、寂しい気がして。
家に帰りたくない、なんて思えてしまって。
複雑や感情が、心の中にわきおこる。

…そんなおかしな自分を振り払うように、
ドアを勢いよく開けたその時だった。
私の体の横から伸びてきた大きな手が、
開いたドアをまた閉めてしまった。
広瀬 李奈
…え…
山田くんの手…。
驚いたように山田くんの顔を見つめた私に、
山田くんは困ったような顔をして言った。
山田涼介
本当はダメなんだけどさ…
LINE交換とか…
してもらってもいいかな?
広瀬 李奈
…へ?
…その山田くんの言葉こそが、





悲劇の始まりだったんだ。

プリ小説オーディオドラマ