家へ帰った私は、リビングに直行した。
門限がないとはいえ、こんな夜中に帰ってくるなんて なかったからとりあえず謝ろうと思ってたんだけど、そこには由奈ちゃんしかいなかった。
由奈ちゃんの言葉に思わずホッとする。
…それもつかの間、由奈ちゃんは急にソファーから身を乗り出して、私の全身をなめ回すように見つめた。
ギクッ!!
な、何を言い出すの、由奈ちゃん!
っていうか、何ギクッなんてしてんの私!?
男なんてできてないのに…。
ただ色々あって山田くんに送ってもらっちゃっただけで…。と、口に出そうとして慌てて口を塞いだ。
危ない危ない。
この事は誰にも言ってないんだった。
由奈ちゃんにも…。
てか絶対由奈ちゃんには言えないよ!
私が山田くんと会ったこと。
それから…連絡交換したことも、。
そんな夢のような話を、
由奈ちゃんにできるはずがない。
誰よりも山田くんのことが好きな由奈ちゃんに
言えるはずがない…。
グッと顔を近づけて、私の顔色を伺う由奈ちゃん。
だけど私は顔をそらしてブンブンと首をふった。
必死でそう言うものの、由奈ちゃんは
「ふーん」といいながら
疑うような視線を私に向けてくる。
お願い…!
うっ…。
その言葉は必要ないよ由奈ちゃん!!
夢見心地でそう言う由奈ちゃんを見てたら、
何だか胸がいたくなった。
由奈ちゃんは、私が山田くんと会ったって話したら
どう思うんだろう?
辛い?悲しい?
きっと由奈ちゃん、知ったら傷つく。
由奈ちゃんの心のうちを思うと切なくなって、
私は口を閉ざすことしかできなかった…。
由奈ちゃん…ごめんね。
こんな妹でごめん…。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。