第27話

story *李奈side*
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2018/01/03 08:09
紗綾
もぉ~李奈たち遅い!!
待ち合わせ場所に着くと、
もう既に紗綾と先輩がいて…
直視できず思わず目をそらしてしまった。
紗綾
先輩、私の友達の李奈と夏希です!
二人とも軽音演劇部なんですよ♪
そしてなんと…二人とも先輩のファンなんですよ!
先輩ってほんっとモテますよね!(笑)
渚先輩
おいおい、紗綾。やめろよ(笑)
茶化すように言う紗綾ちゃんに、
先輩は困ったように苦笑いする。
けれど私と夏希ちゃんに視線を向けた渚先輩は、
ニコッと優しい笑顔を見せた。
渚先輩
紗綾と同じクラスなんだよね?
よろしく
うわぁ…
あんな遠くから見ていた先輩が今目の前にいるなんて…
李奈&夏希
よ、宜しくお願いします
私も夏希ちゃんも、きっと、
緊張で顔が真っ赤になってる。
紗綾
二人ともすっごい歌と演技が上手なんです!
紗綾がそう言うと、先輩は
「へぇ」と声を上げた。
渚先輩
凄いなぁ、二人とも
感心したように言う先輩に、
夏希ちゃんはブンブンと勢いよく首をふった。
夏希
そんなことないです!
私より、李奈ちゃんの方がずっと上手なんですよ
そう言って、夏希ちゃんは私の肩をポンポンと叩くから思わずギョッとしてしまった。
夏希
李奈ちゃんは期待のエースですから♪
えっ、ええ!?
エースって何!?
広瀬 李奈
ちょ、…夏希ちゃん!?
私はうろたえて声を上げるけど、
先輩は目を輝かせながら私をじっと見つめて感嘆の声を上げている。
これは…信じちゃってる感じ!?
エースなんて、そんなこと一度も言われたことないです!って声にしたいけど…
そういう勇気もなく…
紗綾
だよね!?
李奈、将来芸能人になりたいんだもんね🎵
今度は紗綾までもが…
本当に恥ずかしくて顔を上げられない…。
渚先輩
え、そうなの!?
李奈ちゃんならきっとなれるよ!
広瀬 李奈
な、何を根拠にそんなことを!?
私が芸能人なんて…夢のまた夢だ。
暗くてファッションセンスもなくて。
特別可愛いわけでもなく、
何かずば抜けたものがあるわけでもない。
そんなごく普通な私が芸能人なんかになれるはずがないんだ。
渚先輩
え、だって李奈ちゃん可愛いし。
か、可愛い!?
私が!?
紗綾
李奈って無自覚天然ガールなんですよ~(笑)
夏希
そうそう!
この3人…何言ってるかサッパリわかんないや。
何か私だけ取り残された気分になった私は
何も言えず、うつむいていた。
そんな私を見て、渚先輩は
渚先輩
最初から諦めてたら叶う夢も叶わないよ
そう言って微笑んでくれた。
やだ…。
何だろうこの気持ちは。
よくわからない胸のドキドキが大きくなる。
顔が赤くなってるの、きっとバレてるよね。
でもそんな風に綺麗な笑顔を向けられたら、
誰だってドキドキして目を合わせられないよ…。
渚先輩
おっと、もうこんな時間じゃん!
皆そろそろ帰ろうか。
渚先輩が腕につけていた時計を見ると、
もう夜の7時を過ぎていた。
話しているうちにかなりの時間が経っていたらしい。
紗綾
渚先輩ってあっち方面ですよね?
私と夏希は逆方面なんで、
李奈と一緒に帰ってあげてくれませんか?
渚先輩
え?あ、うん!わかったよ
夏希
じゃ、お願いします!!
李奈ちゃん、またね♪
紗綾
バーイ
広瀬 李奈
あ、うん。バイバイ…?
紗綾と夏希ちゃんは手を振ると、
そそくさと帰っていってしまった。
ふと、隣を見てみると渚先輩と目があった。

あ、さっきの二人の変な笑みはこれだったの!?
あの二人…私を渚先輩と二人きりにするためにわざと先に帰ったの!?
てことはつまり、渚先輩と二人きり!?
う、嬉しいというより、二人きりなんてそんなの恥ずかしすぎるよ!
渚先輩
んじゃ、一緒に帰ろっか
そう言って渚先輩が微笑んだ、その時だった。
ブー、ブー…
制服のスカートのポケットの中で、
急に震え出した携帯。
広瀬 李奈
あ、電話だ…
ポケットから取り出せば、
着信を知らせるランプが光っている。
ディスプレイに映る名前を確認せずに、
隣にいる先輩に「すみません」と軽く頭を下げて、
【応答】のボタンを押した。
山田涼介
もしもし?
広瀬 李奈
……
この声…どこかで
山田涼介
もしもし?聞こえてる?
広瀬 李奈
え、あ、はい…?
電話しながら、
携帯のディスプレイに映る名前を覗き見る。
すると
広瀬 李奈
え、山田くん!?
山田涼介
うん(笑)
隣で不思議そうな顔をしている先輩に"山田涼介と電話をしている"と、バレないように小声で話す。
山田涼介
あのさ…今さ…
広瀬 李奈
…風邪、まだ治らないんですか?
声が…
声がなんだかいつもと違うような…?
山田涼介
…いや、風邪はもう治った。
山田涼介
てかさ…
山田くんの声が気のせいか、
徐々に低くなっていっているような気がして
私の体も自然と強ばる。
山田涼介
今どこにいんの?
広瀬 李奈
へっ?どこって学校の近くですけど…
山田涼介
ふーん…誰と…?
えっ、誰とって…
"渚先輩と"そう言えばいいのに
言葉が出てこなかった。
ううん。言いたくないんだ。
でも、なんで…?

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