第30話

story *涼介side*
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2018/01/05 10:15
李奈の学校を後にして、
マンションへ車を走らせた。
助手席に座る李奈はやけに静かで、
何だか悪いことをしたな。と、今更ながらに後悔。
山田涼介
ごめん…
沈黙を破って口を開いたのは部屋に入ってすぐだった。
山田涼介
あの男の子とどっか行く予定だったんでしょ?
ばつが悪そうに謝る俺を、李奈は不思議そうな顔で見上げてきた。
せっかく好きな男の子と一緒だった所を、
無理に連れてこられるとか…嫌だよな…。
これは絶対怒ってるだろう。
恨み言のひとつでも言われると覚悟を決めていた俺に向かって李奈が言った言葉は意外なものだった。
広瀬 李奈
山田くん…
山田涼介
…はい
広瀬 李奈
謝らないでください~!
山田涼介
…えっ?
広瀬 李奈
山田くんに謝ってもらうなんてそんな…
それに、山田くん別に何も悪いことしてないですよ?
山田涼介
……
多分、なんで俺が迎えに来たのかも、
無理やり連れてきたのかも、
わかってないんだな。
鈍感にも程があると思うよ…。
広瀬 李奈
…さっき電話した時。
誰といるか、
答えなかった私が悪いです…
山田涼介
何で答えなかったの?
広瀬 李奈
それは…。わからないんです。
自分でも…なんでだろ…?
そう言って考えるような仕草をする李奈に呆れたようにため息をつく。
山田涼介
ま、いいんじゃね?お互い様で(笑)
広瀬 李奈
…そう、ですね(笑)
あっ!!
いきなり大声を出した李奈に驚いた。
その瞬間、思いっきり腕を掴まれた。
広瀬 李奈
ちょっと一緒にやってもらいたいことあるんです!
悪いことした罰に(笑)
そう言って意地悪そうにニコッと微笑む李奈。
可愛いなー…。
山田涼介
いいけど、何?
広瀬 李奈
やった!!ひ、み、つ~♪
凄く嬉しそうにしてスキップしながら部屋を出ていった李奈の後ろ姿をじっと見つめた。
何か変なこと言うんじゃないよな?
李奈は玄関に置いてある自分の鞄を部屋におくと、
中からDVDを出してきた。
一緒にやりたいことって…俺と映画観たかったのか。

李奈はそのDVDを俺に見せないようにしてニコニコしながら部屋にあるDVDプレイヤーに入れ込む。
女子高生が観るものって…恋愛ものとかかな?
恋愛ものとかだと、俺寝ちゃう可能性大…。

なーんて考えていたら始まって、
李奈はどんな映画をみるんだろう。
とテレビに集中した。
《キャー!!!!!!》
テレビから爆音で聞こえてくる悲鳴?いや、歓声?のような声が聞こえてきた。

まさか…ホラー!?
いや、まさか。
李奈がホラー好きとは思えない。
山田涼介
李奈、音…デカ過ぎじゃない?
いくつにしたの?
広瀬 李奈
30です!
山田涼介
30!?気違い(笑)
せめて25とかにしとけよー
広瀬 李奈
嫌です!
こんくらいじゃないとしっかり声が聞こえないんですよ!
山田涼介
…へぇ(笑)
そんな会話をしていると


《キャーーーー!!》
TVに何かが映り、人の声が聞こえてきた。
お!始まった!!と、姿勢を正して集中しようとした、その時…



《🎼~》

聞き覚えがある曲が流れてきた。
この曲は…
広瀬 李奈
やっぱりHey!Say!JUMPってカッコイイ~
と、うっとりしながら言う李奈。
山田涼介
映画かと思ったらlive(笑)
そう、これはHey!Say!JUMPのliveのDVD。
しかも最近発売されたばっかのやつ。
李奈は本気のファンなんだな…とわかる。
liveのDVDなんて5000円はするし、
これを持ってるのは相当…。

そして、
俺が隣にいることを忘れてTVに夢中になってる李奈になぜかムッとした。
と同時にHey!Say!JUMPの歌までも歌い出した李奈に驚きが隠しきれない。

…歌うまい。
それに、歌詞もしっかり覚えてる。

次々と流れていく曲を丁寧に歌っていく李奈に感心した。
山田涼介
凄いな、歌詞覚えてんの?(笑)
広瀬 李奈
はい!多分JUMPの曲、全部歌えますよ!(笑)
山田涼介
うわー、マジな人だ(笑)
広瀬 李奈
JUMP愛です(笑)
そう照れたように言う李奈に、笑いながら
山田涼介
いや。JUMP愛は俺の方があるから(笑)
自慢気に言う。
広瀬 李奈
そりゃそうじゃないと(笑)
JUMPメンバーなんですから!
二人目を合わせて笑いあった。

女とこんなことしたのは初めてだった。
一緒にliveのDVDを観て、
色んな話を笑いながらして、
こんな楽しい時間を過ごしたことなんかなかった。


それで、確信した。
ずっと心の中にあったあのモヤモヤが何なのかを。



俺は……







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