なぜかビクビクしながら、李奈は俺を見上げた。
李奈はなぜか目に涙を浮かべ、
今にも泣きそうな顔をしている。
なんでそんな泣きそうになってるのか
俺には理解できなかった。
そう言って、曇りひとつない純真な瞳で俺を見る。
その疑うことを知らない純粋な心に、
思わず感心してしまう。
そんないい人じゃないのに。
そんな簡単に信用しちゃダメなのに。
こんな俺を信じようとしてくれてる。
…なぜか守ってあげたいと思えた。
変な奴に引っ掛からないように守ってあげなきゃ…って。
自分でもよくわからないけど。
李奈から目が離せない。放っとけないんだよなぁ。
今、何か言った…?
ボソボソっとしか聞こえなかった。
でも、…その声は震えていた。
俯いてるため、李奈の顔がしっかりと見えない。
そう言って李奈は泣き出した。
え!?なんで!?
俺、何か言った!?
急に泣き出した李奈に俺はパニック状態。
こんな目の前で女に泣かれたことなんてないから、
どうしたらいいかわからない。
そう言ってポロポロと涙を流す
李奈の顔をゆっくりと覗き込んだ。
涙でぐちゃぐちゃな顔…。
こんなボロ泣きしてる女、初めて見た(笑)
でも、なんだろ。
李奈の流す涙は…キレイだって感じる。
自分をよく見せようとか、
好かれようとか、そういうのが一切感じられない。
本当に、変わった奴だ。
けど…
李奈の涙を手で拭いながら笑ってやる。
そう問うと、
李奈は俺の目を真っ直ぐ見て、首を横にふった。
そう笑顔を向けられたその時…。
気がつけば、俺は李奈の体を抱き締めていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!