帰り道。
助手席に座る李奈が、そう静かに呟いた。
ダッシュボードの上に置かれていたHey!Say!JUMPのCDを手に取り、李奈はジャケット写真に写る俺の姿を食い入るように見ていた。
李奈は顔を赤らめながら、小さな声で言った。
赤くなった顔を隠すように、
窓の外を見ながら言う李奈が可愛くて仕方ない。
平然と言う俺に、李奈は目を大きく見開いた。
え…何その反応。恋人じゃないわけ!?
李奈は困ったようにうつむいた。
そう言って片手でハンドルを握ったまま、
もう片方の手で不安そうな顔をしている李奈の頭を引き寄せた。
李奈の唐突な言葉に思わずブレーキを踏む。
危ない危ない…事故する所だった…。
コイツ…天然小悪魔か!!
ちょっとしたことで顔真っ赤にするくせに
こういう事はサラッと言えんのかよ…。
そう言って頬を膨らませる李奈。
そんな可愛い顔でそんなこと言われたら…
言うしかなくなるじゃん…バカ。
緊張しながらも、囁くようにそう言えば
大きく見開かれた李奈の目にはウルウルと涙が浮かぶ。そんな李奈を見て、幸せな気持ちになりながら、自分のマンションへと向かって車を走らせた。
李奈は急に声をあげて、オーディオを指差した。
意外にも声を弾ませて言った李奈に、
思わず目を見開いた。
Sexy ZoneはHey!Say!JUMPの後輩ジャニーズ。
なんか李奈はそういうのに疎いと思ってたから、
Sexy Zoneの曲を知ってることに少し驚いた。
李奈の言葉に、なんだか照れ臭くて顔を背けた。
中島健人はSexy Zoneのメンバーで、
好きな先輩に俺の名前を上げてくれている。
でも、何でそんなこと李奈知ってるんだろ?
TVで何か言ったんかな?
へぇ~驚いた。
李奈、意外にもジャニーズに詳しい。
こんな風に好きな女と仕事の話ができるっていうのもなんだか楽しいな。
それと同時に何だか恥ずかしくなってくる。
だって…Myojoとかって結構恥ずいことするの多いから…写真とか。ドアップで映ってるやつとか…
あぁー見られたくない!!(笑)
ああ~俺の理想のデートをマンガにしたやつね(笑)
理想のデートプランでは
デートの帰り、
彼女の家に着いても車のドアを開けない。
そして、そこで告白!
って感じだったんだけど…
そんなロマンチックなことできるわけない(笑)
どんどんと話をふっかけてくる李奈に思わず笑う。
だってこんな一生懸命楽しそうに話してくるんだもん。可愛すぎんだろー…!
そう言って微笑む李奈に少し驚く。
『鋼の錬金術師』は今上映中で
俺が主演で出させてもらってる映画だ。
ないけど…さぁ。
結構、変顔してる所あったりするんだけど…
まぁ、いっか。
これから一緒にいる時間が増えるわけだし、
そしたら変顔したり俺するだろうし(笑)
大丈夫か。
李奈と色んな話で盛り上がっていると
あっという間に俺のマンションに到着した。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!