紅白もジャニーズカウントダウンも無事終了し、
俺達は事務所に戻って帰る支度を始めた。
そう問われて、首を横にふる俺。
俺は大袈裟にため息をつく。
今はそんな気分じゃないし…
それに今何時だと思ってんだ!?
夜中の3時だぞ!!
もう俺は眠たい…。
早く寝たい…。
まぁ明日は完全オフだからマシだけどさ…。
そう言って皆に手をふる…が、
大ちゃんが携帯を片手に俺をじーっと怪訝そうな顔で見てくる…。
何…??
ちょっとオカマチックに言えばいつも笑って何か面白いこと言ってくれる大ちゃんだけど…
大ちゃんはいつになく険しい表情で自分の携帯を差し出してくる。"これ見てよ"と画面に映されたのは…
そこには
"Hey!Say!JUMP 山田涼介"
"Happiness ミミ" 👈⚠作者が作った架空人物です!
"紅白で再会"
"やっと会えたね。"
と、大きくかかれていた。
そしてコメント欄には…
💬
"ショック…山田くん、彼女いたんだ😢"
"付き合ってんの!?"
"ミミって人と付き合ってるって噂があって、
それがHappinessのミミなんじゃないかって話"。
など…とにかくたくさんコメントされていた。
Happinessというアイドルグループのリーダーであるミミちゃん。
今日も紅白に出てたし、
何度か会ったことあって仲良い方だとは思うけど…
そんな噂されるような仲じゃないし…
それに、俺には李奈がいる。
世間には公表していないけど。
しかも、ミミって…誰だよ。
おさまってくれなきゃ…困る。
李奈にこの噂が届いてしまったら…
絶対、誤解される…。
そう言って、さっきまでの元気さはなくなり、
皆黙りこむ。
少しの沈黙の後、
知念が痺れを切らしたように口を開いた。
その知念の急な告白に驚く。
知念が李奈のこと好きなのは何となくわかってたんだけど、言うタイミングおかしいでしょ(笑)
わかってたよ。
だって…
知念は好きな女にしか自分から話しかけたり、
連絡先聞いたり、ジャケットかしたり…しない。
だから李奈から"知念にジャケットをかりてた"と聞いたときからもう知っていた。
でも、聞かないようにしていた。
聞いてしまったら、
知念と普通でいられなくなってしまいそうで…。
知念を敵対視してしまいそうで…怖かったんだ。
知念が言うなら、俺も言ってしまおう。
ハッキリとそう言い切った俺の言葉が、
予想もしなかったことなのかメンバー全員が驚く。
常に冷静であまり感情を表に出さない知念の表情も…大きく崩れていく感じがした。
心底意外だという顔で、俺を見つめる皆。
少しだけ考えたように黙りこんだ知念が、
冷たい視線を俺に向けた。
黙りこくってしまった知念に、
何だか申し訳ない気持ちになる。
知念もきっと、李奈に本気だったんだろう。
知念の顔はうつむいていてよく見えないけど、
きっと…
今の俺にとって、李奈が全てだから。
俺がド真面目に話しているにも関わらず
知念はなぜか…
笑っていた。
なんで!?
笑う要素なんてどこにもないし!
てか、ここで笑うとかおかしくない!?
知念はそう、俺の目を真っ直ぐ見て言った。
そして、
多分これは知念なりの強がりなんだ…
無理して笑う知念に、少し悲しくなる。
なんで同じ人好きになっちゃったんだろう…。
そう言って微笑む知念に、俺は深く頷いた。
知念との会話が弾むうちに、
噂のことをすっかり忘れてしまっていた…。
あんなことになるなんて
思いもしなかった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!