それからというもの、もやもやすることはなくなった。けど、目の前の奴が好きなんだと思えば思うほど、ふうちゃんの話を聞くのが辛くなった。
それでも、私と目の前のやつの関係は変わらなかった。別に、告白しようと思ったことは無かった。奴の隣にはふうちゃんがいるのに、告白しても振られるのは分かっている。それに、今の私のポジションは、相談を聞いてくれる友達になっている。そのポジションから奴の隣にはなれない。
心の中で、無理だって何度も繰り返しても一度認めてしまった感情は消えてはくれなかった。だから今日は嬉しくなってしまったんだ。
「あのー、あなたって、高校どこ行くんですかー?」
相変わらず敬語だけど、もう慣れてしまった。
「西高だよ」
「あ!そうなんですか。僕と一緒ですねー」
春樹と一緒。この事に嬉しくなってしまった。別に、一緒だからって何か変わる訳でも無いのに。
「ふうちゃんは?」
珍しく私から質問をした。本当は聞きたくないことだけど、一応聞いておいた。
「あー、あの人は北高らしいですよ」
「そうなんだ」
「元気も北高なんですよー」
「へえー」
「いや、全然興味無いですね!」
興味が無いわけじゃないけど、自分の気持ちを押し殺してふうちゃんと目の前の奴の応援をしてきた私にとっては、二人が別々の高校になるのは残念だった。あと、もりもり君が北高なのは興味がなかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。