自分勝手な要望だったけど、少し喜んでいる自分がいるのも事実だった。休みの日に二人で出掛けるなんて、思ってもみなかった。だから、今日はいつもより早く目が覚めたんだと思う。
可愛い服を選んで、鏡の前で何度も自分の姿を確認する。おかしくないかなって。何度も確認して、ようやく納得した。朝ご飯を食べて家を出た。
割と余裕を持って、10分前にコンビニに着いたんだけど、春樹は先に来ていた。
「おー、来たー」
「春樹が来いって言ったんじゃん」
別に、春樹の私服を見るのはこれが初めてじゃないのに、ドキドキした。
「なんか、あなた、今日可愛いっすね」
「え?」
「いやー、なんだろう、うん、可愛いですね」
そんなこと、言われるなんて思わなかったから顔が真っ赤になるのが分かった。でも、その気持ちを抑えて強がった。
「ふうちゃんにも、そういうこと言ってんでしょ?」
そんなことないって、あなただけだよって、言ってほしいと、どこかで思ってた。そんなこと言われる訳ないのに。
「いやいや、あの人には毎日言ってますよ」
「…リア充滅べ……」
分かってても傷ついた。動揺してるのがバレない様に、睨みながら言った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!