長かった卒業式が終わって、教室に帰った。鼻をすする音が教室を満たしている。もちろん私も例外ではなくて、泣かないと思っていたけれど、意外にも涙が出てきた。心の中は冷めていたけど、それなりに学校生活を楽しんでいたからだろう。
教室で担任からの話があり、1人ずつクラスメイトへの思い出を語った。親への感謝の気持ちを伝えて、全員で写真を撮って、教室をあとにした。靴箱では全学年の先生が待っていてくれて、私たちの涙を誘う。
校門を出たところで例のメンバーと思い出を語っていた。
「もおっ!ほんと、にっ!」
予想はしていたけど、ユリは号泣している。
「ユリ、泣きすぎだろ」
冷たい言葉をかけるのは春樹だった。卒業式の時は自分だって泣いていたのに。まあ、確かにユリは泣きすぎのような気もする。
「私たちはさ、高校も一緒じゃん?」
私がそう声をかけると、余計に涙を零した。なぜだ。
「他の、子、はー?」
そう言ってさらに泣き出した彼女を隣で支える彼氏。どこまでもリア充なヤツらめ。
「もっかい、お礼、言ってくる、」
泣きながら担任の元へ歩いていく。視界がぼやけているのだろう。足元がおぼつかない。それを支えるように、シュンもついていく。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。