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第1話

“好き”って何だろう?
21
2017/11/22 17:00
私は、一番前の席に座っていた。
左にはクラスメイトあなたがいた。
そのころ、私は3つ右にいる人のことが好きだった。
でも。
卒業式練習を重ねていく間、自分の気持ちが、
ゆっくりと変わってゆくような気がした。
あなたは、よく喋ってくれた。
当時の私は、何事にも本当に自身がなくて、それでもなんとかクラスの中で明るくいることが出来ていた。
私といつも一緒にいた友達のお陰なのかもしれない。
それだけに、あなたが喋ってくれたのは嬉しかった。そんなに私と喋ってくれるんなら、私も喋るぜ!みたいな感じで、とにかくお互いに幼かった。
でもある程度の恥じらいはもっていた。
だから気軽に男子と話せるといったら、その男子は限られていた。
あなたが楽しそうに話しかけてきてくれた時、最初は何とも思わなかった。
でも、だんだん心の中は動揺するようになっていった。
「あなたは…私のことを…!?」
なぜか小さな期待を抱いていた。それは間違ってはいなかったのであろう、あの人は私とよく喋ってくれた。
こんな馬鹿みたいな期待は、誰にも話せなかった。
だから1人で抱え込むのは少しだけつらかった。
でも当時は今ほど悩んではいなかった、と思う。

中学校に進学してから、私の気持ちは反転した。
あなたと同じクラスにならなかったせいか、全然気にならなくなっていたのだ!
そのため中1は、何もなくただ穏やかに、平和に過ぎていった。
問題は、中2からである。
周りの人の中に、ぽつぽつと付き合い始めた人が出てきたのだ。私は到底、理解出来なかった。
さすがにませすぎだ、と思った。
しかし彼氏彼女が出来た人が増えてくると、私は何だか難しい気持ちになった。私はこのとき、Rというあなたと同じ部活の人をなぜか好きになっていた。
Rは、すごく背が小さくて、スタイルは良くて、可愛くて、一緒にいてとても楽しい人だった。でもRは小さいためか、格好いいという要素が強くはないためか、モテなかった。私だったらすごく好みなのにと思った。
でもそれから踏み出す勇気はなかった。
こんなに“好き”なのに!
こんなに“特別に思っている”のに!
えー、“好き”って何だろう。
私は自分の心情の変化に不安を抱えた。

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