「運んでくれてありがとう。
先生いないみたいだけど、ベッドで休んでるから大丈夫。
…早く授業に戻って?」
一瞬、彼女の瞳が哀しそうに揺れたような気がした。
「分かった、しっかり休んでろよ?」
「うん。」
やっぱり、何か気になる。
だが、俺も授業に戻らなくてはならない。
「じゃあな。」
「ありがとうございました。」
そう言って俺に手を振る彼女。
おかしい所なんて、何一つ無い。
保健室に連れてきてもらったお礼を、俺が教室に戻る前に言っただけだ。
…それだけなのに
どうしても、何かあるような気がして止まない。
────この時、違和感を感じながら、
彼女の側から 離れてしまったこと を
今になって、深く後悔している。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。