〜すずな side〜
あと、余命何日だっけ?
暗算でもできちゃうから
すぐ、頭に浮かぶ
回覧板回しに行くなんて
めんどいなぁ
『え?!すずな!
どうしてここに?!』
何この人、私、知ってるのかな?
怖いよ、もう
『あの……回覧板を……』
とりあえず、渡せばいっか
私には友達ができた
あれ?名前なんだっけ?顔も出てこないや
薬飲めばわかるんだろうけど
不便だなぁ、認知症
友達になりたいんだけど
私はそれを
自分で望まなかった
余命が終わったら
一人にしちゃうから
可哀想すぎるでしょ?
私の今のお願いごと
私が死んでも
誰も
見つけてくれませんように
明後日、7月7日
七夕
明後日まで生きたいなぁ
わたしの願い事
織姫と彦星が
叶えてくれるかもしれないから。
その願いは叶わなかった
7月6日ー高宮すずな 永眠
空から見ていた
君が
私の墓を見つけて
泣いてた
見つけちゃだめだよ
帰りとか、もう、よろよろで
めっちゃ泣きながら
駅員さんのお世話にもなってて
なにしてんの、めちゃくちゃだよ、
家に引きこもってるし
なにしてんの、
私が死んで、1日たった今、
七夕だ
お願いごとなんていくらでもあった
願う、頭の中で
やっぱり、お願いごとなんて
1個しかなかった
『あなたが、学校へ、
すぐに戻れますように
世界の人々の温かさを
知れますように
そして、
夏の奇跡、私がいた日を
いい思い出として
残してくれますように』
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。