ドン
肩と肩が、軽くぶつかる。
私はとっさに「すいません!!」と謝った。
そしたら、なんと相手は先輩だったのだった。
「あ、いや、こちらこそすいません。」
先輩はそう言って、私の通路を空けてくださった。
私は、早く集合場所に行かなきゃならないことと、ぶつかってしまったという事実で頭がいっぱいで、その時はまた話せた喜びを感じる余裕もなかった。
「すいません、ありがとうございます!」
私はそう言って、足早にその場を抜けた。
___
そして、私達の演奏も無事終わり、いよいよ結果発表。
私たちの学校は、金賞を受賞することができた。しかし、念願だった支部大会に進むことは出来なかった。
悔しさでいっぱいだったが、表彰の1番最後の出来事だった。
最後は最優秀団体の発表なのだが、例年だと、毎年全国に出ている常連校が持っていくそれは、今年もきっとそうだろうと誰もが思ってた。
しかし、結果は違った。今年の最優秀団体は、なんと先輩の学校だったのだ。後で聞いた話では、満点のオールAだったらしい。文句なしの1位。私は、なぜか自分のことのように嬉しかった。
そして、この日を境に、先輩と会うことは1年以上なかった。しかし、私はいつも頭のどこかで先輩のことを考えていた。当時は、憧れの人として …
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!