第21話

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2017/12/24 08:18
理事長「夜架くん、この間の体育祭はどうだったかな?」

夜架「……まあまあ。…お日さま、全然出なかった。」

夜架は、つまらなさそうに言う。

理事長「彼…、いや、お日さまのクラスはいろいろ忙しかったみたいだよ。」

夜架「……早く会いたい……。体育祭、あの子、どうなった……?」

理事長「河合 美都くんのことだね、彼女は、上に上がる決断をしたみたいだよ。」

夜架「…きらきらが見えた……彼女は、それであってる。」

理事長「夜架くんは、人をよく見てるね。」

夜架「見る……?私は…感じるの。きらきらを。」

理事長「夜架くん、やはり、君以上の天才はいないよ。」

夜架「お日さま……。お日さまとお月さまは同じ。」

理事長「確かに。彼、お日さまは君と互角、いや、君以上になるかもしれないね。
でも、お日さまは、今はまだ影に隠れているみたいだね。」

夜架「お日さまは…、影で動いているみたい。影が好きなの、お日さまは。」

理事長「あともう少しでお日さまに会えるよ、でも、」

夜架「……空へ連れ出す、会ってどうするのかって聞きたかった……?」

理事長「空、か。それにしても、ずいぶん、コミュニケーション能力が高くなってきたね。」

夜架「お日さまに会える…ため。」

理事長「本当にお日さまが好きなんだね、夜架くんは。」

夜架「うんっ!」

嬉しそうに言う夜架。
夜架が初めて見せた笑顔は、本当に月のようだった。

コンコン
愛瑠「失礼します。って、あなたっ!」
愛瑠が理事長室に入ってくる。
夜架「……おじゃましてます。」
愛瑠「……え、えっ。」

理事長「君も気づいたようだね、彼女、夜架くんは、もう、この前の夜架くんではない。
彼女のコミュニケーション能力は格段に上がってきている。彼女は天才以上だ。
一度聞いたもの、見たものを彼女は、すべて自分のものにしてしまう。」

夜架「…礼儀…大事。挨拶、しっかり。おはよう、こんにちは、いただきます……。」

愛瑠「そうですか。ですが、まだ完璧ではないように見えます。」

愛瑠は厳しく言う。

理事長「君はまだ分かっていないようだね、勉学院 愛瑠 くん。」

愛瑠「えぇ、分かりません。理事長先生、あなたが彼女を特別視する意味が。」

理事長「私は、彼女を特別視しているつもりはないよ。私は、全てに平等でありたいと思っているからね。」

愛瑠「なら、どうしてC組…、第二校舎を創られたんです?平等だとおっしゃいましたが、格下だと思って
笑っておられるのでは?」
理事長「私は、第二校舎の生徒たちを格下だと思ったことはないが、君がそう言うなら、君にとっては、格下だと
思っているんだろうね。」

愛瑠「……っ!わ、私は…っ、思っていません。会長として、この学園、全ての生徒を守るまでです。」

理事長「そう。期待しているよ、なんたって君は、この私立荒野学園の生徒会、会長だ。学園の顔であり、手本だ。
この学園、 全ての生徒を守る、その姿を私はじっくりと見物させてもらうよ。君は、まだ、甘さを捨てきれていない。
次の文化祭までの成長を楽しみにしているよ。」

笑顔で言う理事長。だが、その顔は決して、応援の笑顔ではない。

愛瑠「あなたの、その憎たらしい、自信げで、余裕な顔を私が潰して差し上げます。首を洗って待っていてください、
勉学院理事長。」
愛瑠の顔も、決して笑っているとは言えない顔をしていた。

理事長「あぁ。でも、君にそんなことができたらの話だが。」

愛瑠「出来ますよ、私は。教え子、生徒?いや、実の娘に潰される屈辱を味合わせて差し上げますよ。
資料はここへ置いておきます。では。失礼しました。」

愛瑠は資料を机の上に置いて、理事長室を出て行った。

夜架「……親子?」

理事長「これでもね。夜架くんはお父様とはどうなんだい?」

夜架「…今日はお仕事……、私にたくさんのこと…教えてくれる。」

理事長「いいお父様なんだね。」

夜架「……きらきら。」

突然、夜架はそう言って、夜架は理事長室を出て行こうとする。

理事長「夜架くん、どうしたんだい?」

夜架「……感じる…きらきら…懐かしい感じ。もしかして…お星さま…。行く、お星さまへ。」

理事長「夜架くん、あまり目立ってはいけないよ。」

夜架「…行ってきます。」

ガチャ

夜架は理事長室を出て行った。

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