9年前__
バシッ
俺がまだ小学2年生の頃だった。
俺の無愛想な態度が母さんには気に入らなかったらしく頬を叩かれた。
その日から俺の態度が気に入らなかったら俺の頬を叩いた。
だから俺は母さんに叱られないように毎日愛想よくしていた。違う自分を作っていた。
それから俺は自分の本性を隠すようになり学校ではいい人を演じていた。
母さんはもういない。
事故で亡くなった。
父さんは家を出た。今は新しい奥さんと一緒に暮らしている。
だから俺は一人暮らしをしている。
父さんは母さんを捨てた。
父さんは俺を捨てた。
俺の本当の姿を知っている奴は誰もいない。
誰かに本当の姿を見せようともしない。
だってまたあのときの9年前のことがよみがえってくるから。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。