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第28話

悲劇の始まり
652
2021/06/01 12:50
彼女、あなたの仮社員の祝いとしてビルの1階に入っているカフェへと行くことになり、あなたは少しの楽しさを覚えた。
あなた

楽しいね、鏡花、与謝野医師
ありがとう。受け入れてくれて

鏡花
良かった
与謝野医師
ほう、それは良かったねぇ
あんたは未だ若いからこれからもっと楽しいことが待っているさ
あなたがそっと囁くと、鏡花と与謝野は嬉しそうに応える。
そんな楽しく緩んだ時間は一瞬で崩れる事は何時ものことだ。
ドガァーン!!と近くで何が物凄い音を立てる。

条件反射のようにあなた以外は外へ出て音の方へ走る。


その惨状は酷いものだった。


炎上するいくつもの車にトラック
泣きじゃくる子供
鉄コンに潰され、赤い海がつくられているが1つなんてものでは無い
倒れ、潰れているベビーカー


其れを見た、一同は固唾を呑む。
だが、一分一秒も惜しい。



与謝野は出来るだけ多くの被害者を見ようと、まだ助けられそうな重傷者を診る

谷崎妹は与謝野の援護

敦、鏡花は人命救助

国木田、谷崎は敦、鏡花の指示と援護

あなたはその惨状から目を逸らす。
そんな事は許されないと身体では、頭では理解しているが、両親の事故と重なり立ち竦む。
あなた

はぁ…はぁ…はぁ…

か、さん………と、とぅさん

国木田
違うだろ?!良く観ろ!!
貴様は今何すべきか考えろ!!観ろ!!
国木田の言葉にあなたは我に返る。


冷静になった頭で辺りを見渡し、自分に何が出来るか考える。
あなた

敦、鏡花!!
援護する、私は反対を行く!

了解!!
鏡花
わかった
助ける、そう冷静な考えを導き出せたのは泣きじゃくる子供があなたの目に入ったからだ。

あなたはその子供と自分を無意識に重ね、その子供に自分と同じ思いをさせてはならないとそう思った。
あなたは自分の異能力はまだ制御出来ていない。

だが、感情が其れをガバーしてくれるように、発動を促した。
ボオゥッ、と大きく橙色オレンジの炎に包まれる。

其れを1度体内に留めると右側に紅く、まるで炎がそこにあるかのように模様が浮び上がる。


あなた自身もそんな芸当が出来ることなんて判っている訳では無い為驚き、固まってしまうが彼女には時間制限タイムリミットがある。
鏡花
止まっている時間は無い…!!
成る可く多くの人を助けなくてはいけないの!!
あなた

ご、ごめん!

あなたは体内に留めた炎を動力とし、軽やかに走り回る為の翼をつけ、救助へと向かう。

その姿は、鳳凰の様だった。
あなたは重傷者よりも子供や親子を優先させていた。

まるで、自分を救うかのように_。
粗方、救助も終わり、市警も揃い始めた時またも悲劇が襲う。
四十谷
先程ぶりですね、お嬢様。
まだ私と来てはくれませんか?
そう、この惨状を作り上げたのは夜華グループ、社長だ。


冷静さを保っていた国木田でさえ、表情を曇られた。
国木田
これを仕組んだのは貴様らか?
四十谷
えぇ。
あなた

巫山戯るな、何澄ました顔で肯定してるんだよ…!!

この惨状の恐ろしさ、自分との重なり。
それら全てがあなたの感情を怒りのみに染めらせるのには十分過ぎるものだった為、四十谷の一言であなたは激情した
鏡花
あなた、落ち着いて…!!
与謝野医師
拙いねェ……
あなたを包む異能の炎は激しさを増す。

その危険度に真っ先に気が付いた与謝野と鏡花は発動を解除させようとするがあなたの耳にはその言葉は届かない
あなた

助けられなかった人も居るんだ…!!
私はどれだけ苦しめば救われる?それとも私が居なければいいの?

四十谷
そんな事はありませんよ
私には貴女が必要です。
国木田
それ以上喋るな!
それ以上あなたの感情に触れるな!
あなたが死ぬぞ!
威嚇射撃をしながら、四十谷を阻止しようとするが四十谷にはあなたに近づく足を止めない。
あなた

こ、来ないでよ!!

潤一郎
『細雪』…!!
咄嗟にあなたを異能力で隠し、ナオミと与謝野があなたの傍に向かう

が、それら全てはあなたの行動によって無に帰した。
アスファルトを割り蹴り進む音がするとまるで自身の怒りを表したかのような熱く重い蹴りが四十谷を襲う
四十谷
う、ぐっ……
あなた

はぁ…はぁ…はぁ…

苦しむのは私だけでいい、関係ない人を巻き込まないで

四十谷
……貴女が私達の元へ帰って来て頂けたら、もう手出しはしないと旦那様は仰っていました。
四十谷
「これはまだ始まりに過ぎない、君が帰ってこない限りこの街に悲劇は続くだろう」
との事です
そんな事はさせない!
あなたの前に救助者の返り血で所々紅く染めた敦が庇うように立つ。
四十谷
ほう。貴方にお嬢様を助けられると仰るのですか?
やってみなきゃ判らないだろ…!!
あなた

敦……
大丈夫、私に任せて………。まだ、救助が必要な人が沢山居る。与謝野医師に頼るしか無いけど、でも、それでも助けられるなら助けてあげて

あなたの体力タイムリミットは既に終わりに近い。

ふらつき、霞む視界にも関わらずただ怒りのみで其れを維持し続けている危険な状態である。


敦は下を向き、力無く自分に伝えるあなたの姿を見て其れを理解する。

駄目だ、あなたちゃんは与謝野さんの処に戻って、伝えようと心配の色を見せた表情で口を開いた時
あなた

行って……!!早く……!!!!!!

何を言われるのか察していたのか敦は怒鳴られ、其れに多少気圧される形で救助へと戻る
直ぐ戻るから…!!!!!!!!
あなた

…うん

薄らとあなたは微笑み、四十谷を睨みつける。
四十谷
あなた様戻りましょう。
私は旦那様と奥様から、貴女の事を生前から護るようにと命を下されています。
あなた

其れを信じて戻るとでも…?

すぅ、と息を吸うとあなたは四十谷に蹴りかかる。


体力の落ちたあなたの蹴りなど四十谷に軽く止められてしまう。

さらに殴り掛かるが全て避けられてしまい、全く歯が立たない。
あなた

例え、父さんと母さんがそう言っていたとしても、もう確認する手段など無いし、証人も居ない

四十谷
えぇ、そうですね。
ですが、今この現状は事実です。貴女が戻ればこの現状、ひいてはこれ以上酷い惨劇にはなりませんよ
あなたは浅い呼吸を続けながらも、攻撃を止めない、それどころか、ただ感情のままに動き、異能力の余力で動いているように見えた


だが、あなたには止まる方法も止める方法も判らない。ただ、操り人形のように動き続ける、幼い頃に身につけた体術の技で。
あなた

私だけを狙えばいい…!!
他の人は関係ない…!!

まるで、怯えながらも威嚇する幼い狼のように四十谷を睨み続ける。

そんなあなたの姿を見て、悲しそうに表情を歪めるばかり。


ふらふらと千鳥足になり、倒れそうになるあなたをただ哀しみの表情で辛そうに見つめる。
四十谷
あなた様戻りましょう…。
そうすれば…
あなた

五月蝿い!!!!!!!!
私は、探偵社でハァ…みんなをハァ…守るんだよ…!!
今、泣いてるあの子も…ハァ、私……が…

目の前が暗くなり、闇へと強制的にいざなう体力の限界という悪魔。

あなたからしたら只の悔いにしかならない。


ぐらりと、体勢を崩し地面アスファルトへと向かうあなたの体__。

地面アスファルトとの距離30糎__。

そんなものはあっという間であるが、彼は其れよりも早く動けるが為倒れずに済んだ。

お待たせ…!!
あなた

あの…子…は?

弱々しく、細い聲でそう云う。

敦は苦虫を噛み潰したように顔を顰め、
大丈夫
とはっきり伝えると、あなたは嬉しそうに寝息を立てた。

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