彼女、あなたの仮社員の祝いとしてビルの1階に入っているカフェへと行くことになり、あなたは少しの楽しさを覚えた。
あなたがそっと囁くと、鏡花と与謝野は嬉しそうに応える。
そんな楽しく緩んだ時間は一瞬で崩れる事は何時ものことだ。
ドガァーン!!と近くで何が物凄い音を立てる。
条件反射のようにあなた以外は外へ出て音の方へ走る。
その惨状は酷いものだった。
炎上するいくつもの車にトラック
泣きじゃくる子供
鉄コンに潰され、赤い海がつくられているが1つなんてものでは無い
倒れ、潰れているベビーカー
其れを見た、一同は固唾を呑む。
だが、一分一秒も惜しい。
与謝野は出来るだけ多くの被害者を見ようと、まだ助けられそうな重傷者を診る
谷崎妹は与謝野の援護
敦、鏡花は人命救助
国木田、谷崎は敦、鏡花の指示と援護
あなたはその惨状から目を逸らす。
そんな事は許されないと身体では、頭では理解しているが、両親の事故と重なり立ち竦む。
国木田の言葉にあなたは我に返る。
冷静になった頭で辺りを見渡し、自分に何が出来るか考える。
助ける、そう冷静な考えを導き出せたのは泣きじゃくる子供があなたの目に入ったからだ。
あなたはその子供と自分を無意識に重ね、その子供に自分と同じ思いをさせてはならないとそう思った。
あなたは自分の異能力はまだ制御出来ていない。
だが、感情が其れをガバーしてくれるように、発動を促した。
ボオゥッ、と大きく橙色の炎に包まれる。
其れを1度体内に留めると右側に紅く、まるで炎がそこにあるかのように模様が浮び上がる。
あなた自身もそんな芸当が出来ることなんて判っている訳では無い為驚き、固まってしまうが彼女には時間制限がある。
あなたは体内に留めた炎を動力とし、軽やかに走り回る為の翼をつけ、救助へと向かう。
その姿は、鳳凰の様だった。
あなたは重傷者よりも子供や親子を優先させていた。
まるで、自分を救うかのように_。
粗方、救助も終わり、市警も揃い始めた時またも悲劇が襲う。
そう、この惨状を作り上げたのは夜華グループ、社長だ。
冷静さを保っていた国木田でさえ、表情を曇られた。
この惨状の恐ろしさ、自分との重なり。
それら全てがあなたの感情を怒りのみに染めらせるのには十分過ぎるものだった為、四十谷の一言であなたは激情した
あなたを包む異能の炎は激しさを増す。
その危険度に真っ先に気が付いた与謝野と鏡花は発動を解除させようとするがあなたの耳にはその言葉は届かない
威嚇射撃をしながら、四十谷を阻止しようとするが四十谷にはあなたに近づく足を止めない。
咄嗟にあなたを異能力で隠し、ナオミと与謝野があなたの傍に向かう
が、それら全てはあなたの行動によって無に帰した。
アスファルトを割り蹴り進む音がするとまるで自身の怒りを表したかのような熱く重い蹴りが四十谷を襲う
あなたの前に救助者の返り血で所々紅く染めた敦が庇うように立つ。
あなたの体力は既に終わりに近い。
ふらつき、霞む視界にも関わらずただ怒りのみで其れを維持し続けている危険な状態である。
敦は下を向き、力無く自分に伝えるあなたの姿を見て其れを理解する。
駄目だ、あなたちゃんは与謝野さんの処に戻って、伝えようと心配の色を見せた表情で口を開いた時
何を言われるのか察していたのか敦は怒鳴られ、其れに多少気圧される形で救助へと戻る
薄らとあなたは微笑み、四十谷を睨みつける。
すぅ、と息を吸うとあなたは四十谷に蹴りかかる。
体力の落ちたあなたの蹴りなど四十谷に軽く止められてしまう。
さらに殴り掛かるが全て避けられてしまい、全く歯が立たない。
あなたは浅い呼吸を続けながらも、攻撃を止めない、それどころか、ただ感情のままに動き、異能力の余力で動いているように見えた
だが、あなたには止まる方法も止める方法も判らない。ただ、操り人形のように動き続ける、幼い頃に身につけた体術の技で。
まるで、怯えながらも威嚇する幼い狼のように四十谷を睨み続ける。
そんなあなたの姿を見て、悲しそうに表情を歪めるばかり。
ふらふらと千鳥足になり、倒れそうになるあなたをただ哀しみの表情で辛そうに見つめる。
目の前が暗くなり、闇へと強制的に誘う体力の限界という悪魔。
あなたからしたら只の悔いにしかならない。
ぐらりと、体勢を崩し地面へと向かうあなたの体__。
地面との距離30糎__。
そんなものはあっという間であるが、彼は其れよりも早く動けるが為倒れずに済んだ。
弱々しく、細い聲でそう云う。
敦は苦虫を噛み潰したように顔を顰め、
とはっきり伝えると、あなたは嬉しそうに寝息を立てた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。