第47話

22時
881
2018/02/18 02:00


暗い道を、ただひたすらに歩く。



すると、駅近くに繋がる大通りにでた。


スマホの電源はあらかじめ切っておいたため、時間がよく分からなかった。


時計台の方に向かい、時刻を確認する。




...22時かぁ...



友達と遊びに行っても、必ず8時までには帰ってたから、こんな遅くに外にいたのは初めてかもしれない。



...お母さん達、すごい心配してるかもなぁ...



でも、今日は家に帰りたくないの。



...また、色々考えちゃうと思うから。







しばらく時計台付近でぼーっとしていたら...




男 1
...さっきから、ぼーっとしてたけどどうしたの?

声をかけられた方に振り向くと、知らない男がいた。


.....でも、どこかで見たことあるような...。



サラサラな黒髪に、眼鏡をかけていて、顔立ちは修哉なみに整っていた。
朱音
朱音
...ちょっと、嫌なことがあって。

「へへっ」と苦笑いして、その場を立ち去ろうとした時...




パシッ





手首を捕まれ、突然男の方に抱き寄せられた。






...これじゃまるで、ハグしているみたいに...



だけど、身体はピッタリくっついてない。


というより...くっつけてない?



朱音
朱音
っや、やめてください!
男 1
朱音ちゃん...俺が、嫌な事も忘れるくらい楽しませてあげる。
一緒に来ない?



...前にも、こんな事あったっけ。


暗い道1人で歩いてたら...ね。






学ばない人だなぁ...


あれだけ怖い思いしたのに、また同じ状況を作るなんて...





嫌な事に嫌な事が重なってすごく嫌な日になった。



朱音
朱音
っ遠慮しておきます...
男 1
まぁまぁ、そんな堅いこと言わずにさ。
来るだけ来てよ。


手を振り払おうとしても、男の力が強くてびくともしない。



...もう、この人についていこうか。



何言ったって聞いてくれないんだから、話したって時間稼ぎにもならない。



...監禁とかされちゃったら、どうしよう。



私の人生はここで終わってしまうかもしれない。





こう思ってる時にも、グイグイどこかへ向かっていく男と私。


朱音
朱音
うっ...離してっ...くださいヒック



か弱い乙女か、私は。


何かある事にすぐ泣いて。



掴まれてない方の手で、拭っても拭っても溢れてでてくる涙。







私の異変に気づいた男は、申し訳なさそうな顔をした。



...ん? 何でここまでやっておいて、泣いたら申し訳なさそうな顔をするの?








さっきから感じていた違和感。




掴む手は振りほどけないくらい確かに強いけど、男の人の力はこんなもんじゃないはずだ。


他にも違和感があったと、

男との会話を振り返ってみる。




『っやめてください!』


「朱音ちゃん...俺と...」




...どうして、私の名前を知ってるの?



思い出す限りでは、私は男に名前を教えてない。


なら...どうして?





他にも違和感がなかったか調べる。



.....抱き寄せられた時、男はハグするようで、しようとしなかった。



今までの経験上…これは、いわゆるナンパというやつで、その中でもかなり手強い方。


その手強い方達は、平気で強く抱きしめてきたりした。



…思い出したくない、過去の1つでもある。



けれど、男のハグは、なんだかくっつかないように引き寄せるだけだった。









……この人は、ナンパ目的で私に近づいたわけじゃないのかもしれない。



「朱音ちゃん...」



なぜ名前を知っているのか...



すると、一つの答えが浮かんできた。

















この男は...私の知り合いなのかもしれない、と。

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