プリ小説

第5話

約束
「へぇー、貴方、やっぱサンタクロースなのね」

あの悲劇の翌朝。
そう、本日、クリスマス・イヴ。
聖夜は、気まぐれと言い真穂の部屋に現れた。
いきなり女子の部屋に入ってくるとは何事かと真穂は驚いたが、命の恩人ともいう事もあり、渋々許した。

「まー、サンタクロースって言ってもなぁ…2種類あるんだよ」
「そうなの?」
聖夜に茶を出す真穂。
聖夜はそれをグイッと飲み干すと、話し始めた。
「そう。この時期にプレゼントを届けるのがサンタで、昨夜みたいな餓鬼を始末するのがクロース。」
「なるほど。」
こんな話を直ぐに呑み込んでしまうのが真穂の恐ろしい所である。
普通なら冗談だと思ってしまうのも、彼女は全て真に受ける。
「なら、貴方はクロース…なんだよね?なら何て呼べば良い?」
「いやぁ、本名が讃多(さんた)だし、サンタでも聖夜でも何でも良いぜ」
と、キリッと自分の顎に手をやる。
「なんなら、通りすがりのヒーロー様とかでも…」
「うん、聖夜で良いわ」
聖夜のボケを見事にスルーすると、真穂は茶を入れていたグラスを片付けた。

「それにしても、真穂。オメーの親は何やってんだ?」
部屋を見ながら聖夜は訊ねる。
「…旅行よ」
「りょこぉ!?子供2人残してか?」
真穂は頷く。
「なんかね、商店街のくじ引きやったら1等のペア旅行券が当たっちゃったんだって…本当は2等の掃除機が欲しかったらしいけど」
「へぇ…それで、弟クンとの約束ってのは?」
「な、何で貴方がそれを!?」
慌てた様に真穂は顔を赤らめる。
「いや…昨日弟クンの怪我を直した時に伝わってきて…」
「うー…約束っていうかね…私はもう果たしちゃったんだけど…」
もごもごと言葉を濁らせる真穂。
「教えてくれよー、やくそくぅ」
「う、うーん…いや…うん…あのね…お願い…に、なっちゃうんだけど」
恥ずかしそうに聖夜を見る真穂。
思わずドキッとする聖夜。



「サンタさんを、一緒に見よう、って…」



「ちょっと悠良、起きてるの?」
夜───イヴ。
布団の中で、真穂は今にも寝そうな悠良を必死に起こしていた。
「ふにゃ…ぉねぃちゃん…ねむぃょぉ…」
「折角サンタさん来てくれるのに?」
その言葉で、悠良はシャキッと目を覚ます。
…が、またすぐにとろんと溶けてくる。
(うーん…遅い!遅いよ、聖夜!!)

あの後、悠良にサンタクロースに会わせたいと真穂は聖夜に今夜来る様にお願いしていた。
特にイヴはクロースとしての仕事が忙しいのに、と不満を言った聖夜だったが、最終的には引き受けてくれた。

───が、今。
0時を回ったが、来る気配が無い。

(餓鬼が大量発生してるのかな…手伝ってあげたいけど…私は何も出来ないし…)
「ねむぃ…よぉ…」
「んもぉ、ゆらーぁ!起きてぇー…」
そう言う真穂も欠伸が出る。
(はぁーもう…寝ちゃ…うよぉ…)



意識が遠のいた。





「お姉ちゃん!お姉ちゃん!!」

「ん…んぁあ!?寝ちゃったぁぁぁ!?」
悠良の声で目を覚ますなり、真穂は飛び上がった。
聖夜にお願いをしておいて、寝てしまった。
恐ろしい程の罪悪感に駆られる。
「どぉぉぉしよぉぉぉう」
「ねぇ、お姉ちゃんってば、確かに寝ちゃったけど、これ…」
「ん…?」
悠良が真穂に見せたのは、ツリーの下にあった2つのプレゼント。
その上には、手紙が置かれていた。
「僕の手紙には、"素敵なお姉ちゃんを大切にね!弟クン!"って書いてあるんだ!お姉ちゃんのには何て書いてあるの?」
綴られていた事を読み、思わず微笑む真穂。
「お姉ちゃん?」
「…えへへ、内緒!」










"真穂へ また来年会おう!やくそく だぞ!"

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