プリ小説

第26話

変身
罅割れた真穂の皮膚は、首筋の跡を中心として、徐々に光を放ち始めた。
真穂はぼぅっとしながらそれを見詰める。
光が亀裂から生じたと思うと、次にはその皮膚は剥がれ始めた。
薄暗かった教会が、その光で神秘的に照らし出された。
そして脱皮する様に、今までの皮膚を剥ぎ、その中から真穂は新たな姿を現した。

腰の位置まで伸びた、所々に黄金色が目立つ髪。
首筋の跡は煌びやかな紋章となり、そこから身体中へと茨の弦の様に亀裂の模様が走る。
顔には、その亀裂模様は目の下で2つになっており、神秘的な表情を醸し出す。
身体中に張り巡らされた亀裂模様を隠すかのように、艶やかな衣に身を纏う。
真穂が少し動く度、その衣は美しい音を立てる。
背中からは可憐な翼が生え、虹の鱗粉を撒き散らす。
嫋やかに真穂は一度宙へと舞い上がり、そして餓鬼聖夜とアサヤの前に降り立つ。
「嗚呼…」
餓鬼聖夜は思わず手を組んだ。
「美しい…」
アサヤはその姿に見惚れる。
「…これ、は…」
凛とした表情でものを言うが、それは真穂だった。
「これが、オーディン…?」


いつかの、聖夜との会話。

「そういえば、サンタクロースなのにトナカイの引くソリで空を飛ばないの?」
「ん?あぁー、そりゃサンタクロースじゃなくてオーディンだな」
「オーディン?」
「ああ。オーディンってのはな」

───イヴの空に飛翔し、生命の善悪の裁きにやってくる、神の事。
別名、死神の神、怒り狂う者───



「私が…何故、神様に…」
「お前が丁度良い器だったからさ」
アサヤは真穂の頬に手を伸ばす。
「サンタクロースと親しいのもだが…何より…」
しかし触れる事は無く、ただ愛おしそうに見詰める。
「美しい心を持っている」
「え…?」
「純粋に、イヴを待つのは子供の様な麗しさ───」
つと、アサヤの手が真穂を離れた。
「そして…その純白さは───」




「───汚したくなるものだ」

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