プリ小説

第27話

アサヤの生い立ち
アサヤ───浅夜武(あさや たける)は、産まれた頃から人の暖かさを知らなかった。
DVの父に、母と共に暴力を受けてきた。

起き、殴られ
食し、蹴られ
歩き、踏まれ
泣き、吐かされ

その度、武には黒い羽根が降り注ぐ。

その生活は、武が3歳の頃に終幕した。
母が、暴力の末に殺されかけた。
そして母は遂に防衛本能で包丁を手に取り、父の心臓部に深く突き刺した。
父は赤黒い鮮血をどろどろと流し、絶命した。
その後母は暫くぼうっとしていたが、今まで受けて来た行為の数々を思い返すなり、包丁を再び父に向けた。
そしてその身体を、ザクザクと刺していく。
何度も何度も。
絶句する息子の目の前で。
内臓が剥き出しになるまで狂った様に、笑いながら刺し続けた。
母は父の血に塗れた身体を蹴飛ばすと、次に武に包丁を向けた。
僅か3歳の武。
なす術なく、母に包丁で頬を裂かれる。
血が滴り落ち、武は訳が分からなくなった。
母を突き倒す。

───運悪く、母は後頭部を強く床に打ち付けた。

武は動かなくなった母を見て、泣き叫んだ。





父が殺され、母を殺した武は、児童養護施設に住まう事になった。
そこでは誰もが武に対し優しく接したが、武はその優しさが気持ち悪くて仕方無かった。
武は決して笑顔を見せなかった。
次第に、武は気味悪がられる様になってきた。
陰湿な嫌がらせや、虐めが始まる。

陰口、上っ面の笑顔
物は捨てられ、ゴミ呼ばわり
次第に食事もさせてもらえなくなる。

その度、武には黒い羽根が降り注ぐ。

ある日、施設の1人の女児が殺された。
その女児は、唯一、武の味方だった。
真夜中に、女児が殺される所を、武は密かに目撃してしまった。
殺したのは武に一番酷い行為をしていた、歳上の少年だった。
絞殺だった。
武は何も出来ずに、独りその場を走り去った。

その後警察に連絡が回った。
だが証拠は見付からず、少年の犯行だと断定されなかった。

施設の人間は殺人犯が武ではないかと疑い始めた。
理由など無い。
理不尽な決めつけだった。
施設の人間は寄って集って更に武に酷い扱いをした。

武に降り注ぐ黒い羽根は、量を増した。



武は10歳になった。
自らの誕生日に殺された。
施設の人間に殺された。
誕生日ケーキだ、と出され、食した。
───毒が入っていた。

薄れる意識の中で、武が最期に見たのは、気味悪く笑う施設の人間達。



武は意識を取り戻した。
武は、気付けば白い装飾の付いた、漆黒のマントを身に纏っていた。
(何、これ)
辺りを見ると、蠢く人間が沢山居た。
(こいつら、人間か?)
武は試しにその人間を掴んだ。
それは怯える様に震えると、自ら爆発した。

(───何だ?)
次に目に入ったのは、その蠢く人間が笑顔の人間を喰らい殺す所だった。
(何を喰らった?)
その蠢く人間を掴み上げる。
牙から血が滴り落ちる。

その血を吸うと、武に力が漲った。
その血を吸い、武は生きた。
正式には、ブラックサンタとして。
人の幸福を喰らう事で。



そんな経験を幾度と重ね、武は武という名を捨て、
"アサヤ"と名乗り、ブラックサンタになった。

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