第17話

バカ。
890
2017/12/08 23:00
《オレ…》


ドクンッ。


《クリスマスの、事なんだけど…》


「へっ…?」


思っていた言葉とは違い、拍子抜けする。


クリスマス…?


な、なんだ…


深刻な話じゃなかった…。


ホッと胸をなで下ろす。


別れ話かと思って身構えちゃったじゃん。


「あー、うん、クリスマスね?

どーしたの?

あ、行くとこ決めてくれた??」


自分で変な誤解をしてしまい、恥ずかしくなって口早に聞く。


一応、水族館に行きたいと私の希望は伝えてある。


でも最終的に決めるのは柊真に任せてあるから…。


《えっ…》


…?


“えっ”?


なに、まだ決めてないってこと?


いや、別に当日までに決めといてくれればいいんだけどさ。


それとも…


「まさか、忘れてた?

デートするってこと。」


《いや、忘れてない…けど…》


忘れてないなら良かった。


けど…?


なに?


《ごめん、クリスマス、一緒に過ごせない。》


「…え?」


柊真の言葉の重大さを受け入れられず、反応が遅くなる。


今、なんて?


《ごめん…。》


…どういうこと?


クリスマス、一緒に過ごせない?


なんで?


この前“どっか行くかー”って言ってくれたじゃん。


誘ってくれたの、そっちじゃん。


なに、いまさらっ…


《部活がさ、あって…》


部活?


その日は休みって…1日オフって…


この前そう言ったのは、柊真でしょう?


「部活ないって…言ったじゃん。」


まさか、私以外と過ごす人がいるの?


それともただ単に、私と過ごしたくないの?


《いや、言ったけど…なんか、さっき連絡来て…》


「…そっか。」


…それしか返しようがない。


せっかく…楽しみにしてたのに…っ。


《ほんと、ごめん。》


「いいよ。

しょーがないよ…」


もう、ホントは泣きたいよ。


「じゃぁ、切るね?」


はぁ…。


初めて誘ってくれたと思って浮かれてた。


プレゼントまで買って。


水族館デート、楽しみにしてた。


夜はイルミネーションとか見に行ってさ。


初めて手繋げるかな、なんて。


もしかしたらキスも?とか思って。


あぁ、もうやだ。


涙が出てきた。


冷たい涙。


こんな事で泣いてちゃダメだよね。


分かってる。


ほんとにほんとに、楽しみにしてたのに。


一人で舞い上がって、バカみたい私。


柊真のばかぁっ!

プリ小説オーディオドラマ