《オレ…》
ドクンッ。
《クリスマスの、事なんだけど…》
「へっ…?」
思っていた言葉とは違い、拍子抜けする。
クリスマス…?
な、なんだ…
深刻な話じゃなかった…。
ホッと胸をなで下ろす。
別れ話かと思って身構えちゃったじゃん。
「あー、うん、クリスマスね?
どーしたの?
あ、行くとこ決めてくれた??」
自分で変な誤解をしてしまい、恥ずかしくなって口早に聞く。
一応、水族館に行きたいと私の希望は伝えてある。
でも最終的に決めるのは柊真に任せてあるから…。
《えっ…》
…?
“えっ”?
なに、まだ決めてないってこと?
いや、別に当日までに決めといてくれればいいんだけどさ。
それとも…
「まさか、忘れてた?
デートするってこと。」
《いや、忘れてない…けど…》
忘れてないなら良かった。
けど…?
なに?
《ごめん、クリスマス、一緒に過ごせない。》
「…え?」
柊真の言葉の重大さを受け入れられず、反応が遅くなる。
今、なんて?
《ごめん…。》
…どういうこと?
クリスマス、一緒に過ごせない?
なんで?
この前“どっか行くかー”って言ってくれたじゃん。
誘ってくれたの、そっちじゃん。
なに、いまさらっ…
《部活がさ、あって…》
部活?
その日は休みって…1日オフって…
この前そう言ったのは、柊真でしょう?
「部活ないって…言ったじゃん。」
まさか、私以外と過ごす人がいるの?
それともただ単に、私と過ごしたくないの?
《いや、言ったけど…なんか、さっき連絡来て…》
「…そっか。」
…それしか返しようがない。
せっかく…楽しみにしてたのに…っ。
《ほんと、ごめん。》
「いいよ。
しょーがないよ…」
もう、ホントは泣きたいよ。
「じゃぁ、切るね?」
はぁ…。
初めて誘ってくれたと思って浮かれてた。
プレゼントまで買って。
水族館デート、楽しみにしてた。
夜はイルミネーションとか見に行ってさ。
初めて手繋げるかな、なんて。
もしかしたらキスも?とか思って。
あぁ、もうやだ。
涙が出てきた。
冷たい涙。
こんな事で泣いてちゃダメだよね。
分かってる。
ほんとにほんとに、楽しみにしてたのに。
一人で舞い上がって、バカみたい私。
柊真のばかぁっ!
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。