つ、強い…
鞭と銃で多才な攻撃を繰り出す少女に、あたしー美樹さやかーは、防戦一方で追い詰められていた。
既に魔法少女服のあちこちは破けて、血が滲み出している。
今も、相手が打ってきた弾をギリギリで剣でガードしたところだ。
さっき、まどかにマミさんを呼んできてって頼んだんだけど…なかなか来ない。
は、早く来てくれないと……あたしも、そろそろ限界だ…
鞭がこっちに飛んでくる。
あたしは間一髪でかわすけど、さっき足に貰った一撃が響き、ぐぅっ…と呻き声を漏らしてしまう。
そのすきを相手は見逃してくれなかった。
ダンッ!
響く銃声。足の傷に気を取られていたあたしは当然反応出来るわけでもなく
お腹に直撃した。
い…痛いっ…
強烈な痛みがお腹から全身に広がる。
あたしは耐えきれず、地面に伏せた。
相手が鞭を振り下ろしてくる。
く…かわせないっ!
その時だった…
え…どうしたの?
お腹を押さえて、目をつむって相手の攻撃が来るのを待っていたら、逆に聞こえてきたのは、相手の苦しげな呻き声だった。
おそるおそる目を開けると、少女は鞭を持った右手を、左手で押さえていた。押さえている左手から、血が滲み出している。
この…頼りある声はっ!
あたしはばっと後ろを振り返る。
そこには、いつもの魔銃を手に持つマミさんと、怯えた表情のまどかがいた。
あーもう!遅いよ!待ちくたびれちゃったよ!
あたしに駆け寄ってくるまどか。
正直、かなり痛い。
治癒魔法を持つあたしでも、中々治らない。
あたしの前に、守るように立ちはだかるマミさん。
あたしを抱えて、路地裏の端に運んでくれるまどか。
…なんか、二人には迷惑かけちゃったな…
藍…珠璃?それがこの少女の名前?
珠璃と呼ばれた少女は、口元に笑みを浮かべてこう言った。
マミさんは険しい表情で言った。
風見野って…確か杏子の街じゃなかったっけ…?
…あんな事?
…あんな事って…何?
マミさんの声は冷たかった。
それだけいうと飛び去り、やがて姿が見えなくなった。
…現れた時同様、本当に一瞬だった。
怒涛の流れに、あたしがぼうっとしていると…
マミさんが、いつもの優しい声色であたしに聞いてきた。
さっきまどかがグリーフシールドでソウルジェムを浄化してくれたし、傷も治癒魔法で癒えてきている。
あぁ…まどかは優しいなぁ…
と、その時だった
上から、聞き覚えのある声。
見上げる間も無く地面に降り立ったのは、杏子だった。
と、同じ方向から来たのは転校生…じゃない、ほむらだった。
仲間だし、転校生呼ばわりはダメだよね。
うわぁ、すっごい純粋な笑顔。
これに勝てる人はいないわ、うん。
現に杏子顔真っ赤だし
うわぁ…あの杏子が弄ばれてる。
ふーん…あれが、杏子の素かぁ…。
第一印象は最悪に等しかったけど、中々普通な子かも知れないね!
変身を解きながら、あたしはだれにも聞こえないほど小さなら声で呟いた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。