私…ー巴マミー…は、学校から帰って来て、玄関のドアの鍵を開けて、家に入った。
そう返事するも、何も帰ってこない。大丈夫、もう慣れたことよ…と自分に言い聞かせて、ローファーを脱いで上がる。カバンを机の横においてから、私はふぅ…と息をついた。昨日、あんなことがあったから、なんか一気に疲れたような気がするわ……
この子はキュゥべぇ。私達魔法少女の契約を交わす使者だ。
やはり、あの子は魔法少女の中でも異質な存在の様だ。佐倉さんの事は昔から知ってるからともかく、暁美さんは…
どうやらキュゥべぇは、私の考えていたことを悟ったらしい。
…それは、私にもわかっている。昨日、初めて会ったのに…なぜか、私の名前を知っていた。鹿目さんや、美樹さんの名前も…
私が手を振ると、キュゥべぇはクルリと後ろを向いて、どこかに行ってしまった。
…毎回毎回思うのだけど、部屋は完全に閉めているのに、キュゥべぇはどうやって部屋を出るのかしら?
キュゥベぇが去って、私は一息ついたら、とりあえず紅茶を淹れて、冷蔵庫からケーキを取り出すと、机に並べ、私はソファについて本を読もうとした……その時
コンコンコン
誰かが、ドアを叩く音がした。
と呟いたところで、私はハッとなった。…こんなノックの仕方をするのは…
私はドアを開けて、その人物の名前を言う。
ドアを開けた先にいたのは思った通り佐倉さんだった。
佐倉さんは靴を脱いで玄関に入る。
佐倉さんは、しかめっ面だった顔にいきなりニッと笑みを浮かべると、私にその顔を近づけた。
私は思わず白い目を佐倉さんに向けてしまう。ひょっとして、この子はただケーキを食べたいがためにここに来たんじゃないの…?
私は渋々了解し、キッチンの冷蔵庫からケーキを取り出すと、リビングでくつろいでいた佐倉さんの前に置く。
この子には遠慮ってものがあるのかしら。
あまり心がこもっていないお礼を言う佐倉さん。
仕方なく私はキッチンに戻り紅茶を淹れて佐倉さんの前に出す。
佐倉さんはすでにケーキを半分以上食べていた。
…ものすごい食欲ね。こんなスピードで食べる人、初めて見たわ。
紅茶を飲みながら、佐倉さんは顔だけをこちらに振り向ける。
途端に、佐倉さんの顔がまじめになる。その顔を見て、どうやら佐倉さんは本当に何かを伝えに来たんだ…と、感じた。
思わぬ提案に、私は少し目を丸くする。
言われてみれば…そうだった。
特に佐倉さんは、私以外をのぞいたらほとんど初対面の子達よね。そんなことも気づかないなんて…私、どうやら暁美さんのことを気にし過ぎてたのかもしれないわね。
思わず、少し笑ってしまう。
そう少し顔を赤らめて言う佐倉さんもまたかわいい。
佐倉さんは…本当に変わってしまったのかと思っていた。家族の方が亡くなってから、佐倉さんはまるで別人のように、自己中心的で粗暴な態度をとる人になってしまったのかと思っていた。
でも…まだ、昔の優しかった頃の性格は、少しだけだけど残っているのね。
いきなり、佐倉さんは私の話をさえぎった。
一理あるのかもしれない。特に美樹さん、佐倉さんのこと、あまりいい評価はしていなかったから…
…と、こんなふうに、私達はいろいろと合宿の手続きをしていき…佐倉さんが帰る頃には、あたりはどっぷりと日が暮れていたのでした。
そして次の日………
美樹さんや鹿目さんに合宿のことを言うと、喜んで賛成してくれた。暁美さんの場合は、みんなが行くなら………って感じだったけど、賛同してくれた。佐倉さんは、まるで自分から提案したのかと思えないぐらいに、ぶっきらぼうな返事を返した。そのあと、美樹さんと喧嘩したというのは、言うまでもないけど…
キャンプ場の場所の取り方は、暁美さんに教えてもらった。
あとはしおりを作ったら、合宿の準備は整う。
ただ、気掛かりなのは…
合宿まで、何もなかったらいいけど…
TO be continued
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!