第3話

マミの思惑と杏子の提案
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2017/12/10 02:04
私…ー巴マミー…は、学校から帰って来て、玄関のドアの鍵を開けて、家に入った。
マミ
マミ
…ただいま
そう返事するも、何も帰ってこない。大丈夫、もう慣れたことよ…と自分に言い聞かせて、ローファーを脱いで上がる。カバンを机の横においてから、私はふぅ…と息をついた。昨日、あんなことがあったから、なんか一気に疲れたような気がするわ……
キュゥべぇ
キュゥべぇ
…やぁ、お疲れの様だね
マミ
マミ
キュゥべぇ…
この子はキュゥべぇ。私達魔法少女の契約を交わす使者だ。
マミ
マミ
ねえ、キュゥべぇ…
キュゥべぇ
キュゥべぇ
なんだい?
マミ
マミ
あの子…暁美さんについて、何か知っていることはある?
キュゥべぇ
キュゥべぇ
…さあね。僕も彼女については、なぜかよく理解できていない。むしろ、知らない事の方が多いよ。
マミ
マミ
そうなの…
やはり、あの子は魔法少女の中でも異質な存在の様だ。佐倉さんの事は昔から知ってるからともかく、暁美さんは…
キュゥべぇ
キュゥべぇ
暁美ほむらの事が信用ならないのかい?
どうやらキュゥべぇは、私の考えていたことを悟ったらしい。
マミ
マミ
えぇ、まぁ……
キュゥべぇ
キュゥべぇ
確かに、暁美ほむらは魔法少女の中でも異様な雰囲気をか持ち出す少女だ。杏子の言う通り、彼女は極め付けの"イレギュラー"だね。
…それは、私にもわかっている。昨日、初めて会ったのに…なぜか、私の名前を知っていた。鹿目さんや、美樹さんの名前も…
キュゥべぇ
キュゥべぇ
…それじゃあ、そろそろ僕は帰らせてもらうよ
マミ
マミ
あら、もう行っちゃうの?
キュゥべぇ
キュゥべぇ
あぁ、他の魔法少女の様子も見に行かないといけないからね
マミ
マミ
大変ね、あなたも
キュゥべぇ
キュゥべぇ
でもそれが、僕の役目だ。また暁美ほむらについてわかったら連絡するよ
マミ
マミ
ありがとう、じゃあね
私が手を振ると、キュゥべぇはクルリと後ろを向いて、どこかに行ってしまった。
…毎回毎回思うのだけど、部屋は完全に閉めているのに、キュゥべぇはどうやって部屋を出るのかしら?
マミ
マミ
…ふぅ
キュゥベぇが去って、私は一息ついたら、とりあえず紅茶を淹れて、冷蔵庫からケーキを取り出すと、机に並べ、私はソファについて本を読もうとした……その時
コンコンコン
誰かが、ドアを叩く音がした。
マミ
マミ
誰かしら…
と呟いたところで、私はハッとなった。…こんなノックの仕方をするのは…
私はドアを開けて、その人物の名前を言う。
マミ
マミ
いらっしゃい、佐倉さん
ドアを開けた先にいたのは思った通り佐倉さんだった。
杏子
杏子
な、なんであたしだってわかったんだ?
マミ
マミ
あなた、昔から私の家に来てドアを開ける時は絶対ドアを叩く派だったでしょ?インターホンを鳴らせばよかったのに
杏子
杏子
…よく覚えてんなァ。まあとりあえず、邪魔するぜ。
佐倉さんは靴を脱いで玄関に入る。
マミ
マミ
…それで、何の用?
杏子
杏子
あぁ、実はな………とその前に…
佐倉さんは、しかめっ面だった顔にいきなりニッと笑みを浮かべると、私にその顔を近づけた。
杏子
杏子
アンタのケーキをご馳走してくれよ!マミのケーキは超うめーからな!
マミ
マミ
…………
私は思わず白い目を佐倉さんに向けてしまう。ひょっとして、この子はただケーキを食べたいがためにここに来たんじゃないの…?
杏子
杏子
おい、何だよその目は
マミ
マミ
…はあ、しょうがないわね
私は渋々了解し、キッチンの冷蔵庫からケーキを取り出すと、リビングでくつろいでいた佐倉さんの前に置く。
マミ
マミ
はい、どうぞ
杏子
杏子
え〜、紅茶は?
この子には遠慮ってものがあるのかしら。
マミ
マミ
…はいはい、今持ってくるわよ
杏子
杏子
お、サンキュー
あまり心がこもっていないお礼を言う佐倉さん。
仕方なく私はキッチンに戻り紅茶を淹れて佐倉さんの前に出す。
杏子
杏子
マミって気が効くよなぁ、昔から変わらず
マミ
マミ
今日のはあなたのリクエストでしょう?
杏子
杏子
…それもそうだな
佐倉さんはすでにケーキを半分以上食べていた。
…ものすごい食欲ね。こんなスピードで食べる人、初めて見たわ。
マミ
マミ
…それで、佐倉さん
杏子
杏子
あ?
紅茶を飲みながら、佐倉さんは顔だけをこちらに振り向ける。
マミ
マミ
話ってなぁに?
杏子
杏子
…は?
マミ
マミ
だってあなた、話があるって言ってたじゃない
杏子
杏子
………あぁ、そのことか
途端に、佐倉さんの顔がまじめになる。その顔を見て、どうやら佐倉さんは本当に何かを伝えに来たんだ…と、感じた。
杏子
杏子
あのさ、できたらでいいけど、みんなで合宿を開きたいと思うんだよな
マミ
マミ
合宿…?
思わぬ提案に、私は少し目を丸くする。
杏子
杏子
昨日、いきなりイレギュラーに集められて、いきなり挨拶もなしに協力関係を勝手に結ばれて、わけわかんねえことの連続だろ?
マミ
マミ
そうね…
杏子
杏子
だろ?そんなあたしらが仲良く協力できると思うか?
マミ
マミ
…………
言われてみれば…そうだった。
特に佐倉さんは、私以外をのぞいたらほとんど初対面の子達よね。そんなことも気づかないなんて…私、どうやら暁美さんのことを気にし過ぎてたのかもしれないわね。
杏子
杏子
だからよ、その………何だ?交流ってやつか?とにかく、それを深めたいなってて思ってよ、だから、合宿なんかどうかな…って
マミ
マミ
…ふふっ
思わず、少し笑ってしまう。
杏子
杏子
な、何だよ!何がおかしいんだよ!
そう少し顔を赤らめて言う佐倉さんもまたかわいい。
マミ
マミ
…なんかね、あなたが言うと違和感があるのよ
杏子
杏子
違和感…って!こっちは真剣なんだぞ!バカにすんな!
佐倉さんは…本当に変わってしまったのかと思っていた。家族の方が亡くなってから、佐倉さんはまるで別人のように、自己中心的で粗暴な態度をとる人になってしまったのかと思っていた。
でも…まだ、昔の優しかった頃の性格は、少しだけだけど残っているのね。
マミ
マミ
…わかったわ、合宿の話は私で進めるわね。
杏子
杏子
…そうか、助かる
マミ
マミ
いいのよ、気にしないで。でも、合宿の場所とかはどうするの?
杏子
杏子
あぁ、それなら、あたしがちっこい頃、親父に連れてってもらったキャンプ場があるんだ。あそこ、結構いいところなんだぜ?
マミ
マミ
そうなの…じゃあ、そこにする?
杏子
杏子
まあ、あんたがいいなら
マミ
マミ
了解したわ。それじゃあ、佐倉さんはこの事を鹿目さん達に…
杏子
杏子
あー、それはあんたの口から言って欲しいんだ
いきなり、佐倉さんは私の話をさえぎった。
マミ
マミ
え…どうして?
杏子
杏子
考えても見ろよ。あたし、まどかやさやかとは昨日会ったばかりなんだぞ?
マミ
マミ
そうね…
杏子
杏子
そんなあたしから、いきなり合宿しよーなんて言われてうんそうだねって気になるか?あたしならぜってー、断るね
マミ
マミ
…………
一理あるのかもしれない。特に美樹さん、佐倉さんのこと、あまりいい評価はしていなかったから…
杏子
杏子
だから、みんなから信頼のあるマミに言って欲しいんだ。
マミ
マミ
そういうわけなら…仕方ないわね。
杏子
杏子
そっか…、いろいろと助かるよ
マミ
マミ
気にしないで。あと、キャンプ場の場所教えてくれないかしら?
杏子
杏子
うーん…パソコン、どこだ?
マミ
マミ
あそこにあるわよ
杏子
杏子
あれで予約取るのは?
マミ
マミ
まず、場所を教えて
杏子
杏子
あぁ、場所か?それはな…
…と、こんなふうに、私達はいろいろと合宿の手続きをしていき…佐倉さんが帰る頃には、あたりはどっぷりと日が暮れていたのでした。
そして次の日………
美樹さんや鹿目さんに合宿のことを言うと、喜んで賛成してくれた。暁美さんの場合は、みんなが行くなら………って感じだったけど、賛同してくれた。佐倉さんは、まるで自分から提案したのかと思えないぐらいに、ぶっきらぼうな返事を返した。そのあと、美樹さんと喧嘩したというのは、言うまでもないけど…
キャンプ場の場所の取り方は、暁美さんに教えてもらった。
あとはしおりを作ったら、合宿の準備は整う。
ただ、気掛かりなのは…
合宿まで、何もなかったらいいけど…
TO  be  continued

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