優しく笑みを返すまどかに、あたしー美樹さやかーは、ほっこりと暖かい気持ちになっていた。
まどかは、可愛らしくて女の子っぽくて、誰にでも優しくて…あたしとは真逆。
今も、何気なく笑っただけだと思うけど、あの優しく、暖かくて柔らかい笑顔。誰だってあの笑顔には暖かい気持ちになってしまう。
………って、なんだかあたしだけの「まどか憧れトーク」みたいな感じになっちゃってるじゃん!ま、親友なんだし、別にいいよね?
教室のドアの前で待っていたあたしにもまどかは駆け寄ると、何かを尋ねて来た。
多分…いつも学校帰りにしている、「見滝原市パトロール」のことを言っているのだろう。
魔法少女であるあたしたちは、毎日人気のない廃工場や、治安の悪い繁華街などを見回っている。あ、チンピラとかには絡まれていないので、ご安心を。
まあそりゃ、不良とかもいるわけだしね。怖いっちゃあ怖い。
でも、それが正義の味方・魔法少女さやかちゃんの役目なのだー!
…いや、そこまで関心しなくても…
…などなど、軽口を叩きつつ、あたし達は校門をくぐって、学校前にある広場で一旦立ち止まった。
そ、そんなこと微塵も知らなかった。
…こんなことに気づかないなんて、正義の味方失格だよ…
…魔法少女じゃない…
そういう単語が真っ先に頭に思い浮かんだ。多分、マミさんか杏子か転校生だ…
…何?
…………!!
ほかの魔法少女が、こっちに来たって事になる。魔女を追いかけて、仕方なく見滝原に入ったんだったらまだしも、縄張り目当ての魔法少女だとしたら、戦わなきゃいけない…
まどかは悲しそうに、顔を伏せた。あたしも同じ気持ちだったから、まどか…と呟く意外、何もできない。
あたしの、その前向き(?)な言葉に、まどかは少し元気をもらったみたいで、
と、いつものほわっとした笑みを浮かべた。
もう先にズンズン進んで行くあたしに、まどかは声をかけたのだった
ソウルジェムを片手に繁華街をうろついていると、少し反応が強い場所があり、あたし達はそこへ走っている。
走って来たから、かなり息が苦しい。壁に手を置き、大きく息を切らせながら、あたしは正面の場所を睨んだ。
そこは、薄暗い路地裏だった。周りに人影はない。
人を誘い出すには絶好の場所ってわけね…
その時、息を切らしたまどかが、ようやくあたしに追いついて来た。
あたしはそういうと、ソウルジェムを掲げて結界をあばきだす。
そこは…いつも通りの、人間離れした、狂った世界だった。
ケタケタという不気味な笑い声。
奇妙な装飾品。
でも、あたしがビビってどうするの!
あたしは魔法少女。みんなの平和を守るヒーローだ!
魔女から分裂した使い魔。
最初のうちはよく違いがわからなかったけど、今はある程度わかる。
魔女と使い魔じゃ、結界の広さが違うし、何より、少し魔力の波動が小さい。
子供が泣くような声が聞こえたと思ったら、次には変な、クレヨンで書かれたようなものが実態化して、移動しているのが見えた。
使い魔だ!
あたし達は顔を見合わせて頷くと、ソウルジェムを掲げた。
次の瞬間、ソウルジェムから光が溢れて出て、あたしの体を包み込んでいく。
ローファーが青いショートブーツに、紺色の靴下が、ベルト付きの白い靴下に。
チェックのスカートが、藍色のミニスカートに。
制服が藍色の衣装に変わって、首にマントがつく。
光が消える頃には、あたしは藍色の衣装を身に包んだ魔法少女になっていた。
横のまどかも、桃色の衣装の魔法少女になっている。
あたしは結界の上の方に飛んで行くと、壁から壁へ飛び移り、使い魔を追い越して数メートル先に行くと、地面に降り立ってまどかに合図した。
まどかはサッと空気を手で切ると、その手の中に弓矢が生まれる。
掛け声と共にまどかは弓矢を放ち、使い魔のスレスレで止まる。驚いた使い魔は、あたしのいる方向へ逃げてくる。でも、まどかの弓矢は使い魔を追い続ける。
前はあたし。後ろはまどか。
使い魔に逃げ場はない。
よし…行くよ……!
あたしは剣を抜き、使い魔に放とうと、狙いを定める。
…でも次の瞬間
パァン!
…え?
何かが弾けた様な音がした。
あたしの目の前には…さっきまでいたはずの使い魔がいない。
…なんで?
その疑問に答えてくれたのは…
あたしでも、まどかでもない、別の声だった。
TO be continued
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。