“あたし、小さい頃は施設で育ったの
本当の両親は暴力を振るったり
男を取っ替え引っ替えしたりって
どうしようもない人間だったらしくて
あたしは通報を受けて保護されたらしい
今の両親は5歳の頃に引き取ってくれた里親
施設の人も新しい両親もいい人たちばかりだった
けど、身体と心に受けた傷は簡単に消えなくて
愛されるということが分からなくて
あたしは笑うこともなく、反発ばかりしていた
そんな時だった
「そんな隅っこで何してんだ?」
楓翔と出逢ったのは…
「え?」
「そんなとこにいてもつまんねえだろ?こっち来て一緒に遊ばね?」
「…っ……」
その時のあたしは素直に受け止められなかった
周りの大人たちが哀れみの目で自分を見てることを
何となく感じてたから
「…っ……あたしの事なんてほっといてよ!可哀想なんて思ってるなら迷惑だから!」
「………ばっかやろうー!!」
耳がキーンとなるほどの大声でその少年は叫んだ
「へ?」
「誰もそんなこといってねえだろ!俺はただ一緒に遊ぼうって言っただけじゃんか!そんなに俺と遊ぶのが嫌なのか?」
「別にそういうわけじゃ……」
「じゃあ、決まりだな!」
そういうと少年はあたしの腕を掴んで走り出した
「ちょっ!」
「あ、名前いってなかったな。俺は楓翔。お前は?」
「……日向」
「日向だな。これからよろしくな!(ニカッ」
ドキッ
乱暴な言葉遣いで手段も強引
けど、すごく純粋で眩しいほどの笑顔
それが楓翔の最初の印象だった ”
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。