デート当日
水族館、ショッピング、イルミネーション
とデートはシンプルなものだったが
楓翔が懸命に考えてくれたのを知ってたから
すごく嬉しかった
そして、最後のイルミネーションで0時少し前……
「楓翔、今日は本当にありがとう!すごく、楽しかった♪」
「なら、よかった。…日向」
「ん?」
「今日、言おうと思ってたんだ。……俺、ずっと前から日向の事が…」
カーン カーン
楓翔の言葉を遮るように時計台の鐘が大きく響いた
鐘が鳴り終わるとあたしは楓翔に尋ねた
「何を言いかけたの?」
「っ~。俺、すげぇかっこわるいじゃんか。……日向が好きだ。俺と付き合ってくれ!」
「!…はい」
「…っ、よっしゃー!」
楓翔はまるで子供のように喜んだ
「けど、最後が決まんなかったのは残念だな。まあ、楓翔らしいっちゃらしいけど…」
鐘が鳴るということはクリスマスの終わりを意味する
だから、あたしたちの記念日は26日ということになる
「…悪かった。じゃあ、お詫びにこれやるよ」
楓翔はあたしの手首にブレスレットをつけてくれた
「綺麗…」
「俺とお揃いな!…日向、来年こそは一緒にクリスマスすごそうな(ニカッ」
そう言って楓翔は笑った
「うん!約束だよ?」
あたしもつられて笑った
顔はすごくイケメンというわけじゃないし
マイペースでやり方は強引だけど
いつもあたしを優しく気遣い、想ってくれる
それな楓翔のことが大好きだった
だから、ずっと一緒にいたいと思っていたし
未来がそうなると信じて疑わなかった
けど、去年のクリスマス2週間前に
楓翔は交通事故に巻き込まれこの世を去った
「何で…何でよ!一緒にクリスマス過ごそうって約束したじゃん!楓翔ー!」
何日も、涙が枯れそうなくらい泣き続けた
あたしは支えを、幸せを、愛しい人を
全て失った
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。