「楓翔……楓翔!」
あたしは何度も呼びながら楓翔に抱きついた
「楓翔…会いたかった」
「うん。俺も」
あたし達はしばらくお互いを抱きしめていた
そして、少し離れて改めて楓翔の顔を見る
あの時とちっとも変わっていない
「あの手紙は楓翔が?」
「そう。俺だよ」
「何で?どうして直接会いにきてくれなかったの?」
「まあまあ、理由としては俺はもう死んでるからだよ」
「え…」
あたしは楓翔の身体にそっと触れた
しかし、とても死人のものとは思えなかった
「だって、今もここに…温もりだって…」
「これは仮の姿。…じゃあ、約束通り教えてあげるよ。真実ってやつを」
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俺は去年のクリスマス2週間前に交通事故で死んだんだ
けど、どうしても日向との約束を果たしたくて
なかなか成仏出来なかった
そしたら、神様がこう言ったんだ
“君は相手の女の子にも大切に想われている。こんなに互いを想いあえる奴に会うのは始めてだ。だから、君に1年の猶予をあげよう。その間、精一杯悔いのないように彼女を支えてあげなさい”
だから、俺はずっと空から見守ってたんだ
けど、日向は哀しみにうちひしがれたままだった
本当は少しだけ嬉しかった
それだけ俺の事を想ってくれてるんだって
でも、それじゃダメだと気づいた
思い出を大切にすることは悪いことじゃない
けど、俺のせいで日向が笑わなくなるのだけは嫌だった
だから、手紙を書いたんだ
未来の事が分かったのは神様に協力してもらってたから
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「どう?あの手紙たちの意味には気づけた?」
思い返せば楓翔が行くように指示した場所には
両親、雪乃、亮太…
いつもあたしの事を想ってくれる人たちがいた
「もしかして…」
「そう。日向は小さい頃のトラウマで実感しにくいだけなんだ。自分が愛されてるってことを」
「…っ……」
「自信持てって。お前には支えてくれる人が沢山いる。苦しくなったら、辛かったら周りに頼ればいいんだ。だから、日向!前に進め!」
そう言って楓翔は以前と変わらぬ笑顔を浮かべた
「……分かってる。前に進まなきゃってことは、頭では分かってるの」
ポロッ ポロッ
我慢の限界だった
あたしの目から沢山の涙がこぼれた
「けど、前に進んだら……そしたら、楓翔の事を忘れてしまいそうで怖いの。楓翔は初めて好きになった人だから忘れたくないの」
たまらずにあたしは泣き出した
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。